リニア新幹線大阪延伸前倒しへ…で終わりじゃないよ

こういう話がある.
<新成長戦略>リニア中央新幹線 大阪延伸前倒しを明記へ (毎日新聞) – Yahoo!ニュース.
「健全経営と安定配当が大前提」 リニア大阪前倒し開業論でJR東海社長 – MSN産経ニュース.
当初のリニア新幹線の大阪延伸計画は2045年.もちろん,大阪近辺では「もう死んどるわ」という感想を持って受け止められていたが,まずは(同時とは言っていないが)早期開業を目指す国の方針が出てきたことは喜ばしいことである.
ところで,早期開業ばかり注目を浴びているが,名古屋から西の区間については,整備計画の審議段階において大阪まで繋ぐことの重要性については確認できているが,その経路については十分な審議がされておらず,唯一の論拠が1973年に決めたから,だけである.
もちろん,国の決定は重要なのだが,何度も書くように当時の政策背景は新全総であり,昔風の言い方をするのならば新幹線のネットワークを全国に拡げる「新幹線の建主改従」であった.いっぽう,リニア新幹線は当の鉄道会社が声高らかに主張するように「バイパス」であり「改築」である.昔風に言うなら「新幹線の改主建従」である.世の中の政策も1970年代の高度成長の産めよ増やせよの時代ではなくなっており,同じ国土政策の方向性とは言い難い.
要するに,名古屋と大阪という両端はともかく,途中の通過経路はほんとにそれでいいのか,議論されていないのが問題だということである.現在の状態は言葉は悪いが名古屋以東の議論にくっついて西側の話も通ってしまった状態だといっても過言ではない.
建設前倒しの理由が「新たな成長戦略」であるならば,どういう経路が成長にとって最適であるのかは今一度考えた方がいいだろう.1970年代のように新線建設して新駅つくれば周辺に無条件で機能が張り付く時代ではなくなっている.
もし,この辺の舵取りを間違えて既存の大都市が衰退などすれば,「成長戦略」ではなくなるし,推進した関西の議員さん達は関西全体に目配せできるだけの慧眼を持っていなかったということになるし,東西間の輸送を一手に引き受けるんだと意気込んでいたはずの鉄道会社は沿線の顧客の利便を確保することが出来なかった田分け者の誹りを受けることになるし,いずれも歴史に名を刻んでしまうことだろう.(悪い意味で)