路面電車というと「道路に線路を敷き,その上を電車が走る」というのが標準スタイルであるが,中にはちょっと変わった路面電車も存在する.
「ディーゼルトラム」というが,要するに電車ではなくてディーゼルエンジンで走る気動車である.路面軌道ならぬ路面気動車である.
比較的有名なのは旧東独のZwickauという都市であるが,実はここの路面電車は「電車」が基本である.郊外から来る鉄道線から路面に直通する系統があり,それだけが路面気動車で,あとは電車になっている.市内の電車は狭軌,乗り入れる「路面気動車」は標準軌なので,一部区間に路面の三線軌があり,そこをゴトゴトと「路面気動車」が走ってくる.

実はZwickau以外にも「路面気動車」は存在する.厳密には「シリーズハイブリッド車」と言った方が正確かもしれないが,路面電車区間は電車として走り,郊外鉄道線で非電化区間を走る場合だけエンジンを吹かして発電して走るものがある.それが,これ.ドイツのカッセルの電車で,郊外線から乗り入れる系統である.カッセル大の先生に教えていただくまで,全く気付かなかったが,駅で観察すると確かにエンジンの音がしているものもある.

屋根の上をよく見ると,電車らしからぬ「排気口」があり,周辺がススで汚れている.

日本でも似たような形式の電車の試作車があるんだったっけ?
東北に行ってみた(亘理→相馬編)
常磐線で行けるのは南側は広野までなので,いったんいわきまで戻り,磐越東線,新幹線を乗り継いで仙台へ.今度は北側からいけるところまで行ってみる.
まずは,仙台→亘理.本数は少ないながら特に問題なく到着.直接電車だけで行けるのはここまでで,ここからはいろいろ乗り継がなければならない.

次は,亘理→相馬.この区間は不通区間なので,バス代行になっている.切符は仙台→原ノ町のものを持っているので,そのまま通しの切符を見せるだけで乗車.乗り継ぐ客は少なく,地元の人の多くはこの駅から先は自家用車で送迎というのが主流のようである.

この区間が不通になっているのは,常磐線の線路が津波で破壊され,流されてしまったからであり,復旧にあたっては線路の位置そのものを内陸側に移設させることになっているようだ.下の写真は代行バスの坂元駅だが,「駅前」の空き地は新駅予定地のようだ.
元の駅位置はここ.
新駅はこの辺.

新地駅の代行バス停駅の海側は,急に市街地が途切れて荒れ地が広がる.元の駅とともに市街地も消滅してしまったのだろうか.
[map lat=”37.881469″ lng=”140.924288″ zoom=”16″] [/map]



相馬駅着.自家用車に比べてかなり時間がかかり,亘理駅まで送迎が多いのはそういうことのようである.

相馬→原ノ町は電車が運行中.線路の右側は原ノ町方面.左側の錆びているのは不通区間.2両編成が行ったり来たり.


(2013年11月現在)
東北に行ってみた(広野駅周辺編)
常磐線がどうなってるのか,気になったのでいけるところまで行ってみた.まずは南側から.上野から列車を乗り継ぎ,途中で一泊していわきまで.そこから先は「広野行き」という珍しい行き先の電車に乗って終点へ.火力発電所があるところ,とか言うよりはサッカー好きの人には「Jヴィレッジ」の最寄りと言えばわかりやすいか.今やJヴィレッジは彼の発電所対応の拠点になっている.サッカー少年達はどこに行ったんだろうか.



広野駅から先はただいま復旧工事中である. 津波で落橋したのであろうか,橋梁部分(カルバート?)も工事中であった.


駅を降りて周辺をぐるっと歩いてみるが,海岸沿いの林は木の下半分だけが枝葉が無くなっており,津波がこの高さまで達したのであろう.駅よりも海側のうち,低地部分は建物も破壊されている.


駅海側のやや標高が高い部分には新たに住宅地が造成中であった.海沿いで被災した方などの移転先であろうか.
(2013年12月現在)
整備新幹線前倒し「やった方がいい」 : そのとーり
新聞に麻生氏、整備新幹線前倒し「やった方がいい」 という記事があったが,そのとーり.よくわかってらっしゃる.何がもったいないかというと,中途半端につくられた構造物が,何の利益も効果も発揮することなく,長期間野ざらしにされることほど,もったいないものはない.作り始めたら(もちろん借金の利率にも依るが)さっさと完成させて,使い始めるのが一番.

それから,「北陸新幹線については、南海トラフ地震などで東海道新幹線が機能しなくなる可能性を指摘し、危機管理上も早期の整備が必要だとの考えを示した。」という件も,よくわかってらっしゃる.そのとーり.
残念なのは,北陸新幹線の大阪近辺をどうするのかという方針が決まってないこと.大阪近辺はいろいろと幹線鉄道計画の課題がゴチャゴチャと存在しているが,誰も整理できていないというのが,残念なところ.
リニア新幹線整備の理由(段取りまとめ編)
新幹線整備の計画プロセス,想定と実際の違いのまとめ.何がまずいか,わかるかなぁ?
【基本計画】
| 本来 | 実際 | |
| 考慮事項(全幹法) |
|
|
| 本来 | 実際 | |
| 調査内容(施行令) |
|
|
| 本来 | 実際 | |
| 決定事項(施行令) |
|
|
★★★★そして,技術的に500km/h運転が現実的になり,最近になって…★★★
【整備計画】
| 本来 | 実際 | |
| 決定事項(施行令) |
|
|
| 本来 | 実際 | |
| 規定無し |
|
|
| 本来 | 実際 | |
| 補足的内容(施行令) |
|
|
何だか,このテンプレート,表組みあんまりきれいに出ないなぁ…
リニア新幹線整備の理由(華麗にスルー,パブコメ編)
いろいろと突っ込みどころが多い審議過程だったので,公式にパブコメとして募集時期にちゃんと指摘している…が,いろいろと都合の悪いことが書かれていたのだろうか,華麗にスルー.そんな指摘はなかったかのような扱いである.私の周りには他にも華麗にスルーされた人がいるようだ.気に入らないからって,スルーは良くないよね.これじゃぁ,パブコメの意味なかろう(厳しく言えば,行政手続法第43条に違反だよね).
以下,誤字脱字を含めて,送ったものそのまま.ただし,メールアドレスは,変なメールがいっぱい来ないように@を◎に置き換えてある.
**************************************************
差出人:hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp
件名: 中央新幹線に関するパブリックコメント
日付: 2010/08/28 13:53
宛先: g_RWB_KTD◎mlit.go.jp
CC: hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp
お世話になります。
中央新幹線に関するパブリックコメントを提出いたします。
募集要領の「テキスト形式でお願い致します。」の意味が
不明瞭でしたので、本メール本文および添付ファイル(word
ファイル)をお送りします。内容は同一です。
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「中央新幹線に関するパブリックコメント」
(フリガナ):(ハトコ マサトシ)
1.氏 名:波床 正敏
2.住 所:大阪府大東市中垣内3丁目1−1
3.所 属:大阪産業大学工学部都市創造工学科
4.電 話 番 号:072-875-3001(内線3722)
5.電子メールアドレス:hatoko◎ce.osaka-sandai.ac.jp
意 見
【1】全国新幹線鉄道整備法施行令第二条に基づく再計算
中央新幹線は昭和48年11月に運輸省告示第466号により基本計画線となっているが、昭和45年9月制定の全国新幹線鉄道整備法施行令第二条によると、基本計画を決定しようとする際には以下の事項を調査しなければならないことになっている。
(1)新幹線鉄道の輸送需要量の見通し
(2)新幹線鉄道の整備による所要輸送時間の短縮および輸送力の増加がもたらす経済的効果
(3)新幹線鉄道の収支の見通し及び新幹線鉄道が他の鉄道の収支に及ぼす影響
すなわち、すでに中央新幹線が基本計画となっているということは、上記調査が済んでいるということである。これら諸量は、新幹線鉄道の速度等が設定され、都市間の所要時間が決まらない限り求めることができないが、昭和48年当時は磁気浮上の実験がようやく成功したばかりであるため、上記諸量は従来型の新幹線鉄道を想定して計算されているはずである。時速500キロという運転は想定されていないため、再計算が必要と思われる。
このうち、(1)についてはすでに明らかにされていると思われるが、(2)については所要輸送時間の短縮については明らかになっているものの、経済的効果(特に地域経済に与える影響)については不明瞭であり、公表が必要である。また、(3)については収支の見通しは計算されているものの、他の鉄道への影響については既設の東海道新幹線への影響が示されているに過ぎない。
このような再計算を行う際、中央新幹線を超高速運転しようとしていることに十分注意しなければならない。従来型の新幹線整備の影響はせいぜい沿線に配慮して計算すれば、大きな誤差を生じる可能性は小さい。しかし、リニア新幹線は、在来線はもちろんのこと、従来型の新幹線鉄道網をも支線として機能させてしまうほど高速であるため、影響は極めて広範囲に及ぶ。リニア新幹線沿線相互間の影響は全体のごく一部である可能性が高い。したがって、沿線に限定した経済的効果や他の鉄道への影響の再計算では不十分であり、全国的な視点が必要である。
【2】整備目的の明確化が必要
中央新幹線をリニア新幹線として整備するその本来の目的は、わが国中央部に位置する三大都市圏を結ぶ東海道新幹線の機能を補完・向上させることであると理解しているが、現状のリニア新幹線計画には幾つかの不明瞭な点が存在する。
第一の点は、大都市を完全には結んでいない点である。東海道新幹線ののぞみ号の機能をリニア新幹線に移転させようとしているという基本的な方針については理解できる。しかし、のぞみ号が結んでいる大都市と中央新幹線の経路は一致していないため、三大都市圏を結ぶ東海道新幹線のバイパスとしてリニア新幹線を位置づけようとすると、その機能は万全ではないと思われる。大都市間の相対的位置関係を大きく崩さないために、どのような方策を考えているのか、明確にすべきではなかろうか。このままでは、中央新幹線沿線となる大都市と沿線外となる大都市との間で、利便性の大きな差を生むことになり、中長期的にはそれら大都市の盛衰を大きく左右する可能性が高い。
第二の点は経路選定の理由が明確でない区間が存在することである。東京−名古屋間については、東海地震等の被害を最小限にするという観点から内陸部経由を採用することには一定の合理性がある。しかしながら、名古屋−大阪間についてはルート選定の明確な理由が見いだせない。東京−名古屋間を中央新幹線として整備するからといって、全幹法の中央新幹線の経路をそのまま大阪まで辿らなければならない、という積極的な理由は存在しない。基本計画線は全線一括で整備計画にしなければならない、ということもない。現に北海道新幹線は青森から旭川までが基本計画であるが、整備計画になったのは札幌までである。地質調査等が済んでいるからという理由についても、国土構造を変化させるかもしれない大事業に関する理由としては、積極的とは言い難い。
唯一考えられるのは、奈良経由により沿線を開発するという目的であるが、リニア新幹線の主たる目的は三大都市圏間の結節、特にのぞみ号が停車するような大都市間の結節機能であるので、沿線開発は副次的なはずである。もし沿線開発目的が最重要であるとするならば、それは他の整備新幹線と同じ整備目的であるということになり、費用負担や並行在来線(この場合は実態を考慮すると近畿日本鉄道になるであろうか)の問題など、一般的な整備新幹線の建設手順のルールに従うべきである。
【3】大阪延伸の遅延は国土構造に悪影響
大阪への延伸が、現時点の計画では2045年になっているようであるが、遅すぎる。名古屋開業から20年近くもかかってしまうと、大阪都市圏の衰退が明瞭になり国土構造が変化してしまう。これでは、東西間の円滑な交通を提供するという東海道新幹線およびそのバイパスの機能を十分に果たさないことになる。
歴史的に見て、明治期の鉄道網構築期において早期整備された地域(太平洋岸など)と遅れたところ(日本海側など)の整備時期の差は概ね20年程度であった。この時期にわが国の人口分布は大きく変化している。また、戦後の高速交通網の整備時期においても交通利便性の地域的格差を生じており、その後の地域発展の度合いに影響を与えている。リニア新幹線は既設新幹線に比べて速度が倍程度であり、運行頻度は航空機よりも格段に多い。このため、明治、戦後に続くわが国陸上交通に多大な影響を与える第三の波になる可能性が高く、遅延は看過できない。加えて、影響は三大都市圏に限らず、かなり広範囲に及ぶはずであるが、沿線の議論に終始してしまっているのも残念である。
大阪への延伸が大きく遅れる原因は資金調達である。巨額の建設資金を自己資金として調達するという決断は、わが国の交通史に刻まれる大英断である。しかしその一方で、民間企業の資金調達問題が国土構造をゆがめてしまうことは避けるべきではなかろうか。資金が民間により調達されるからといって、国は黙してして語らずという態度を続けるべきではない。
【4】防災の観点について
東海道新幹線のバイパスとして中央新幹線を建設する目的の一つは、大規模地震発生時にも東西間の交通を確保することにある。JR東海作成の資料(第3回プレゼン資料7頁)では東海地震発生時の震度分布に関する資料が示され、中央新幹線が概ね震度の大きい地帯を避けられることが示されている。一方、愛知県の示した資料(第5回愛知県作成プレゼン5頁)によると東海地震と東南海地震の同時発生時には、中央新幹線は名古屋付近においてかなり広範囲に震度6弱以上の地帯を通過しなければならないことが示されている。
歴史的に見て東海地震が単独発生したことは無いようであるので、大地震への備えという点では愛知県の示した震度分布の資料を重視して東西間交通確保の方策を考えるべきと考えられるが、それに対する考えが明確でない。名古屋が被災して使えなくなれば、東海道新幹線であれ、中央新幹線であれ東西間を結ぶことができない。大地震発生時の東西間交通の確保は、東海道新幹線と中央新幹線だけでなく、さらに北方の幹線鉄道網も含めて対応を考えておくべきではないか。
********************************************************************
*—*
波床正敏(HATOKO Masatoshi)
大阪産業大学 工学部 都市創造工学科
http://www.osaka-sandai.ac.jp/ce/rt/
リニア新幹線整備の理由(整備計画のツッコミどころ編)
中央新幹線計画に関する手順がいろいろとツッコミどころが多い話の続きである.今回は,整備計画関係である.整備計画を定めるには,施行令第3条に従って以下の項目を定めることとなっているが,やはりツッコミどころがある.
- A.走行方式
B.最高設計速度
この辺の項目は,整備計画の策定手順が改定された際に比較的最近になって追加された項目である.一見,ここで決め直しさえすれば基本計画の想定についてはオーバーライド(上書き)がOKなように思えてしまうが,さにあらず.整備計画は基本計画の上に成り立っているので,基本計画が有効である場合にのみ整備計画が有効なはずである.前回指摘したように基本計画の前提条件が時代の流れとともに大きく変化してしまっているにもかかわらず,何らまともな見直しがなされていない状況では,基本計画の正当性が失われている可能性が大きい.整備計画の実際の審議過程では,350km/h運転の鉄輪式の場合と500km/h運転の磁気浮上式が比較検討されているが,前者でも250km/hに比べると40%増,後者に至っては100%増で,特に後者は基本計画の想定とは大きくかけ離れた設定になっている.基本計画が単なる方便と化しており,正当性の合理的な証明がなされていない. - C.建設に要する費用の概算額
この辺は,まぁスルー - D.その他必要な事項
整備計画に関する審議では,整備計画の審議時に必須事項として法令では記されていない不思議な項目も議論されている(しかも,パブコメが終わってから).それは何かというと,経済効果等である.思い出して欲しいのだが,「輸送力の増加がもたらす経済的効果」の検討は基本計画の策定時におこなわなければならないのだが,なぜか整備計画の段階で審議している.これでは明確な政令違反である.いくら専門家2名のお墨付きを付けても,「計算があっている」だけで,手続きの合理性は得られない.
続けて,施行令第3条第2項に関しては…
- I.整備計画は、工事を着手すべき時期に応じ、建設線の区間ごとに定めることができる
整備計画の審議の結果,全線一括で整備計画に格上げになったが,2045年開業区間が「工事を着手すべき時期に応じ」たものかどうか,怪しい.整備5線は,整備計画策定時には速やかに着工しようとしていて,結果として整備時期が遅れてしまったが,こちらは最初から遅くなることがわかっているのに,なぜか一括である.30年も経過すると,社会構造自体が変化してしまう可能性がある.現計画のスケジュールは,全体計画の速やかな実施能力を欠いていることを証明してしまっていると判断するのが妥当ではないだろうか.
いろいろと本則から外れた審議過程に思われる.
リニア新幹線整備の理由(基本計画のツッコミどころ編)
前回は全国新幹線鉄道整備法(全幹法)と全国新幹線鉄道整備法施行令(施行令)に忠実に段取りをするとどうなるのかについて書いてみたが,実際の中央新幹線計画に関する手順はいろいろと妙である.今回は基本計画関係である.
まず,全幹法に従って1973年に中央新幹線の基本計画が立てられているので,全幹法により考慮された事項も施行令により実際に調査された項目も(ドラえもんもBack To The Futureのデロリアンもまだ出現していないので)当時の想定で調査され,決定されている.そうすると,それぞれ,以下のツッコミができる.まずは全幹法第4条関係.
- 1.輸送需要の動向
輸送需要を想定するには,所要時間がわかっている必要がある.速い交通機関には客が集まるが,遅い交通機関には客が来ない.速度がわからないと需要など想定のしようがない.当時の新幹線は250km/hを想定したインフラ上を210km/h運転していた.500km/hはまだまだなのに,当時の想定で作った計画を流用している.250km/hが260km/hになりました…なら大して違いはない.300km/hでも2割の違い程度だ.倍半分ではさすがに気がつく(はず,なんだがねぇ). - 2.国土開発の重点的な方向
当時の国土計画は「新全総」,国土整備の方向性としては「大規模プロジェクト構想」,大規模インフラ整備で「国土の均衡ある発展」を目指すのが当時の方向性であった.今は「国土の均衡ある発展」の看板は下ろされ,「国家のリスクマネジメント」というのが最新のスローガンである.方針が違えば形成すべきネットワークが違うはずだが,そのまま流用. - 3.効果的な整備を図るため必要な事項
当時は,日本国有鉄道.今は旅客鉄道会社.しかも株式を全部放出した完全民営会社.「効果的」の基準が異なる可能性がある.
次に施行令第二条関係.
- a.輸送需要の見通し
上にも書いたように,500km/h運転の交通機関はまだ存在せず,せいぜい250km/h運転が想定範囲なので,見通しもこれに基づくもの.さすがに倍半分では結果は大きく違う.基本計画策定時の議事録等の公文書が残ってれば書いてあるはずだが… - b.所要輸送時間の短縮
「所要時間=距離÷速度」なので,速度が倍違えば所要時間も倍半分の関係.速度が決まらない限り,これは求まらない.速度が変われば,これも変わる.変われば計画策定時の前提条件が大きく変わったことになる. - c.輸送力の増加がもたらす経済的効果
輸送力とは,量的な能力と速度的な能力の2面あるが,少なくとも速度面は大きく変更されている.経済効果は速度面が大きく影響するが,速度が変われば経済効果は大きく変わる.大きく変われば計画の前提条件も大きく変わったということになる. - d.収支の見通し
収支見通しは建設費と運賃と客数と運営費が大きな要因だが,リニアと鉄輪では建設費も客数も運営費もだいぶ違うはずだが,基本計画時に『「鉄輪式の中央新幹線」と「リニア式の中央エクスプレス」とが比較された』などという話は聞いたことが無い.というか,当時は公式検討できるほども実験は進んでおらず,だいぶ後になって技術的な見通しが公式にお墨付きを得ている. - e.他の鉄道の収支に及ぼす影響
速度が違えば影響が変わる.国土計画が変われば路線形態,経路,起終点すら変わる可能性がある.速度を計画時の倍にしておいて,計画時と同じことが言えるのか?
このように,基本計画策定時とは前提条件が大きく変わってしまっているにもかかわらず,基本計画は再検討されることも無く次の段階に進んでしまった.社会状況が大きく変わるような状況下では同じ計画では具合が悪いというのは,教科書レベルの話なんだけどなぁ.基本計画の合理性は?大義は有りや無しや?
事実上の法令違反ではないか?
リニア新幹線整備の理由(法律の想定する段取り編)
再び同じような話で恐縮だが,新幹線を計画史,整備の段取りをして工事に入るまでの行程を,全国新幹線鉄道整備法(全幹法)と関連する政令の全国新幹線鉄道整備法施行令(施行令)に従って解読すると,このようになる.(大事な話なので,繰り返しました.)
まず,全幹法に従って基本計画を立てる.全幹法第4条の1により以下の3項目を考慮し…
- 輸送需要の動向
- 国土開発の重点的な方向
- 効果的な整備を図るため必要な事項
施行令第2条に従って,以下の調査を行い…
- 輸送需要の見通し
- 所要輸送時間の短縮
- 輸送力の増加がもたらす経済的効果
- 収支の見通し
- 他の鉄道の収支に及ぼす影響
施行令第1条に示された事項を決めて…
- 建設線の路線名
- 起点
- 終点
- 主要な経過地
全幹法第3条に示された路線を計画する
- 幹線鉄道網を形成
- 中核都市を連結
ここまでで基本計画策定.//
さらに,整備計画策定を定めるには,施行令第3条に従って以下の項目を定め…
- 走行方式
- 最高設計速度
- 建設に要する費用の概算額
- その他必要な事項
施行令第3条第2項に従って…
- 整備計画は、工事を着手すべき時期に応じ、建設線の区間ごとに定めることができる
となっている.ここまでで整備計画策定.//
この後,環境影響評価を行った後,工事実施計画をつくって許可を得てようやく着工.この段取り手順,よーく覚えておいてね.
リニアモーターカー発達史
ML100試験車(1972〜)
研究所の構内を走行し,初の浮上走行に成功.速度は60km/h.人の乗車を想定して設計していないようだが,一応,座席があり,開発者の方がこっそり乗って走行したことがあるらしい.

ML500試験車(1977〜)
宮崎実験線で使われ,517km/h走行成功.ただし,座席はなく,コイルの装置にカバーを被せたようなもの.

MLU001試験車(1980〜)
はじめて客室を設置し,宮崎実験線で運用.405km/h運転に成功.

MLX01試験車(1996〜)
中央新幹線の基本計画策定時の試験車は「ML100」,公式に「中央新幹線=リニア」になったのは四全総(1987)からなので,その当時の試験車は「MLU001」.担当者の胸の内ではかなり早期の段階から「500km/hの中央新幹線を」と思っていたかもしれないが,公式にはこういう時代背景であった.








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