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初夢鉄道答え合せ(東日本新幹線編)

続いて東日本新幹線編の答え合わせである.

1970年制定の全国新幹線鉄道整備法はさすがに古いという話になり,「新全国幹線鉄道整備法」に衣替えされた.「新」の文字の位置が違うだけに見えるが概念が大きく変更されている.それまではフル規格の新幹線を何が何でも作るんだという前提で計画が組み立てられていたが,全部フル規格というのは無理っぽいことが見えてきたので,昔「ウナギを頼んだら穴子が出てきた」と揶揄された方式を前面に押し出すとともに,穴子の他にもハモやウツボも用意した.

残念ながら,幹線鉄道政策全体の見直し議論は全く進まず,相変わらず整備新幹線の議論だけであり,しかも次に着工する区間の沿線選出の議員さんが活躍する,という構図は変わっていない.沿線選出でも国全体を見渡して議論ができればいいんだが,なかなかそうは運んでいないようである.

2010年代半ば以降,「地方創生」政策が掲げられ,かつての「均衡ある国土の発展」の再来かと思われたが同じ轍は踏まなかった.国土の均衡を掲げていた全総は新産業都市,定住圏構想,テクノポリス,物流のための高速道路網完成等々,産業立地を最優先にしていたがほとんど失敗であったことを反省していた.一連の全総でほとんど唯一成功したのが新幹線であったため,新幹線整備に力を入れる方式になっていた.だが,建設資金は限られており,無い袖は振れない.そこで,穴子やハモ,ウツボである.おいしければ良い.もちろん,必要に応じてウナギも出す.

”地方創生”のためには新幹線が重要であるという認識は,ここ数年顕著に上昇してきているように思われるが,その認識向上は主に地方部におけるものであり,中央政府では相変わらずである.整備財源は相変わらず国家予算のppmオーダーであり,遅々として進まず.

例えばミニ新幹線でお茶を濁していた奥羽新幹線に対しては,地元はフル規格化を要望していたが,山岳の線形が厳しい区間だけがフル規格新線が建設され,あとはミニ新幹線のまま高速化が図られた.高速化の敵は踏み切り,駅構内,曲線などであるが,都市部では都市計画事業として高架化事業が積極的に進められ,欧州都市並みに都市内からは踏み切りが消滅した.都市を抜けた郊外部では単独の立体交差事業がいくつか進められ,やはり踏み切りがほとんど消滅した.曲線部分については,曲線改良を目的とした土地区画整理事業が認められるようになり,改良が進んだ.こうして,フル規格では無いミニ新幹線区間も160km/hでの連続運転が可能となった.国土交通省ではこのような新形態を准新幹線と呼ぶようになっている.

これは一部分であるが正夢になりそうな気配である.山形新幹線の板谷峠部分に高規格新線を建設して所要時間を短縮するとともに天候に対する輸送の安定性を向上させよう,という構想が動き出しつつある.正月にこの話を書いたが,サクランボの美味しい季節にはそういったお話を現地でする機会にも遭遇した.なお,山岳部以外の高速化については,今のところ動きはない.

羽越線などの貨物列車が多く走る区間ではFGTが活躍しているが,やはり難所については新線建設が行われ,貨物列車も130km/h運転されている.もちろん都市部は高架化が進行し,全線にわたって130km/hの連続運転が可能になっている.国土交通省ではこのような形態についてはスーパー在来線と呼ぶようになっている.

FGTは実用化の目処が立たず.残念.在来線の目立った改良もなく年末を迎えた.

従来の全幹法に基づく新幹線計画では,茨城県内や長野県内の中規模以上の都市が高速鉄道ネットワークから外れていたが,こういった新しい鉄道政策により実質的な新幹線ネットワークに組み込まれるようになっている.

こういった新ネットワーク構想も進まず.残念.

北陸新幹線は敦賀から先大阪までのつなぎ方で長らく揉めていたが,結局,大都市の京都をスルーするのはまずいということで,若狭湾近辺をかすりながら京都市内で東海道新幹線に接続される今までにない案が採用された.さらに敦賀-米原間は准新幹線によって結ばれ,中京方面にも利便性が向上している.

書いてみるもんだね.前半は概ねあたりつつあるかな? 東海道新幹線に京都駅から合流するかどうかは現時点では不明.敦賀−米原間の「准新幹線」も不明.

大阪まで北陸新幹線が繋がることで,北陸新幹線と東北・北海道新幹線を大宮で方向転換するだけで直通運転できるようになり,夜行新幹線が「トワイライトエクスプレス」の名で運転されるようになった.大きな車体を活かして居住性抜群で大人気だ.この頃には整備新幹線の260km/h規制が緩められていたが,新大阪発札幌行き列車は先を急ぐ列車ではなかったので,途中駅に長い目に停まりながらゆっくり走っている.

北陸新幹線がまだ大阪までの目処が立っていないので,新幹線版トワイライトエクスプレスはまだ見えてこない.

それから,首都圏では東日本の高速鉄道網が充実することで大宮-東京間の新幹線の線路容量が逼迫し,大宮から別線で新宿に至る新線が作られ,今や新宿駅も新幹線始発駅として活躍している.新宿-品川間の延伸の話も聞くようになった.

大宮-新宿間の新幹線新線も,現時点では具体化していない.

つづく

大阪は副首都になれるか(地盤編)

前々回は副首都の立地場所として,平常時における大阪は悪くないという話であった.前回はまとまった土地がどこにあるかの話であった.

今回は,大阪市および前回取り上げた地区の地震動の話である.副首都は地域振興策では無く,非常時—特に首都直下地震や南海トラフ地震—におけるバックアップ機能を果たすことが期待されるため,地震で機能停止するような場所には設けられない.首都直下地震と南海トラフ地震は事実上連動する可能性もあるので,東京以外ならOKというものでもない.首都が機能停止している間に南海トラフ地震が襲うという最悪シナリオであっても対応できるのが副首都の要件である.

さて,以前にも参照したこのファイルを見ながら話をしよう.昨今の建築・建設技術等の発達に伴い,震度5台では大きな都市災害は起こらなくなってきているので,震度6弱以上あるいは震度6強以上で見てみよう.詳しい震度については,こちらのサイトの方が便利かもしれない.

まずは大阪府下である.

【大阪市中心部&夢洲】
震度6弱以上で見ると,ほとんど真っ赤(30年以内確率26%以上),つまり大阪市の中心部には逃げ場が無い状態である.夢洲も同様.震度6強以上だと,地下鉄堺筋線と谷町線附近の南北に長い地域—すなわち上町台地が若干マシで30年以内確率3%以下になっている.つまり,大阪市内は対地震の観点では非常に心配だが,敢えて言えば上町台地がマシ,ということである.上町台地の庁舎を放棄して府庁を埋め立て地に,というのは災害リスクの観点では論外ということ.なお,30年以内に3%の確率で震度7に見舞われる地区は大阪市内では京橋駅北方や住之江区の一部のようであり,このへんは特に避けた方がよさそう.

【伊丹空港付近】
地震に関しては概ね大阪市内の上町台地と同程度のようである.ただし,大阪空港の西側の猪名川に近いあたりは大きな震度に遭遇する確率が高めのようであるので要注意.中国豊中インター付近も地震リスク高め.

【万博記念公園付近】
ここは伊丹空港付近に比べて,さらに半段〜一段,地震リスクが低くなる.震度6弱以上では伊丹空港付近と同程度だが,震度6強以上だと色が1段薄い.他の視点での結果も同様の傾向だ.

【陸上自衛隊信太山演習場附近】
ここは,地震のリスクに関しては万博記念公園付近と伊丹空港付近との中間的な度合いのようである.大阪市内よりはマシだが,決定的にリスクが低いわけでは無い.

…ということで,大阪市内は論外として,府下では万博記念公園あたりが無難そうに見える.続いて大阪府以外についてである.

【巨椋池跡地附近】
なんとなく予想はしていたが,大阪市内と同レベルの地震リスクである.上町台地の方がマシ.沼地の干拓地であるので,足下はズブズブということだろう.堆積物が厚く層をなしているのかもしれない.ここは開発はしやすそうだが,対災害を考えると重要拠点には向いていなさそう.

【陸上自衛隊祝園分屯地附近】
ここは万博記念公園と同程度のリスクのように見える.ただし,分屯地を超えて開発する場合は要注意で,東側の木津川方向は地震のリスクが急に大きくなる.逆に西側の京阪奈丘陵の地震リスクは大阪付近の開発可能な地域の中では低い部類である.

【陸上自衛隊長池演習場附近】
ここは祝園分屯地よりもさらに若干ではあるが地震リスクが低そう.京阪奈丘陵と同程度だろうか.

…ということで,大阪付近でまとまった土地があり,なおかつ地震のリスクが低めのところを探すと,万博記念公園付近か陸上自衛隊祝園分屯地附近の京阪奈丘陵,あるいは陸上自衛隊長池演習場附近あたりということになる.


初夢鉄道答え合せ(北海道新幹線編)

続いて北海道新幹線編の答え合わせである.

2014年度終わり頃になって北海道新幹線の開業前倒しが決まり,その当時は2030年頃に開業することになった.その当時は,と書いたのは実はさらに伏兵があったわけである.つまり,オリンピックである.2026年の冬季五輪に札幌が手を上げたわけであるが…

今のところ,札幌オリンピックの話もさらなる北海道新幹線開業前倒しの話も出てきていない.

札幌-東京間は1000km以上もあり,新幹線といえども航空からか客を奪うことが難しく,経済合理性の観点では函館延伸も札幌全線開業両方とも,航空と同程度のサービスレベルを提供するのがやっとで交通サービス水準を向上させたとは言えず,厳しい状況であった.

この辺の厳しい状況は白日の下にさらされつつある.青函トンネルの扱いが他の整備新幹線とは異なって特殊な扱いになっていることが大きな原因になっているんじゃ無いかと思う.

そこで…実際に実行された.

一つ目は速度の向上であった.新幹線電車そのものは350km/h運転できるようにブレーキ系統を中心に改良が行われ,同時に盛岡以北の整備新幹線区間の260km/h運転の縛りを緩めることが検討された.結局,盛岡以南と同レベルの騒音ならば260km/h運転にこだわらないということになり,首都圏を脱したあたりから札幌までの350km/h運転が実現することになった.

この辺の動きも新しい話は無いが,整備新幹線区間における速度向上の話は時折聞くので放棄されていないように思われる.しばらく様子見かな.

もう一箇所,問題があった.青函トンネルである.在来線の貨物列車が走っていたため,新幹線が高速走行しているとすれ違い時に貨物列車が風圧で転倒する危険があったため,新幹線は140km/h運転になっていた…

青函トンネル内の速度向上についても,特に新しい動きは無い.

そこで,もう一本トンネルを掘る案が出てきたが長大海底トンネルは工費が高い.そこで,新型の新幹線電車が走ることを前提に勾配をきつくして,トンネル延長を短くすることになった.30‰勾配が採用されたため,トンネル延長は元の54kmから35km程度へと大幅に短縮された.

新トンネルの話はあるようである.”初夢”とは若干異なり,新トンネルを単線の貨物用として掘削し,旧トンネルを原則として新幹線用にするという構想は聞いたことがある.

元のトンネルについても在来線貨物列車だけ走らせるだけではもったいないという話になり,新幹線用の広軌線路を使用してカートレインも運行されることになった.これに伴い旧トンネルは国道指定されることになり,旧トンネルを道路財源で買い取った形となってそれが新トンネルの建設財源になっている.今や青函旧トンネルは国道5号の一部であり,国道5号の起点は函館から青森に移された.新幹線が通れるトンネルが2本になったことで夜間運転が実現し,新幹線を経由する北海道行き夜行便が復活した.

鉄道行政と道路行政の融合は残念ながら進行していない.航空行政もそうだ.相変わらず縦割りで国土交通省が発足して15年以上になろうかというのに,全く相乗効果は無い.

北海道新幹線は計画としては旭川終点であるが,さすがにフル規格は厳しいという話になり,道内幹線鉄道計画は大幅に見直された.主要路線は新幹線と直通する三線軌でミニ新幹線が函館以北の北海道新幹線と直通し.三線軌でない区間は寒冷地仕様のFGTが直通している.こうして道内幹線鉄道網は一新された.

北海道新幹線の終点駅である札幌駅の構造が地下になりそうであったり,あるいは現役の西側になりそうであったりと,どうやら延伸を考えていない構造のようだ.残念.FGTも雲行きが怪しい.

つづく

大阪は副首都になれるか(用地確保編)

前回は副首都の立地場所として,平常時における大阪は悪くないという話であった.今回は「大阪に副首都としての機能を受け入れる空間はあるのか」という話である.要するに用地確保の問題である.

すでにNHKや日銀といった一部の機関は非常時に大阪で全国的機能を代替できるように準備しているという話があったかと思うが,最も重要なのは日本政府そのものの各省庁等をはじめとする機関である.これら機能とほぼ同じものを大阪に立地させるには,(ハコモノ云々という話はあるものの)やはりある程度のハコは用意しなければならない.

東京の霞ヶ関地区(およびその周辺の官庁街)と同程度の面積が確保できるかどうかが一つの目安だろうか.概ね1.5-2㎢程度か.

以下,地図のスケールは全て同じである.


【夢洲案】
大阪府下で探してみると,まず考えられるのは大阪湾の埋め立て地である.大阪湾の埋め立て地である咲洲や舞洲には既にいろいろと立地してしまっているので,夢洲なら今のところがら空きである.「統合型リゾート」と称するカジノ候補地でもある.面積的には十分広い.

だが,カジノはともかく隣の咲洲の高層ビルを大阪府庁舎にしようとして失敗したという黒歴史(長周期地震動に弱かった)がある.津波は大丈夫かな? その上,交通アクセスも今のところ道路が1本,ヒミツの地下鉄トンネルが1本という状況なので,かなり不便である.決定的なのは広域交通の弱さで,新幹線駅まで40-50分以上かかる.

【伊丹空港案】
これについては,ずいぶん前から伊丹空港を廃港にして跡地を首都機能移転先にする構想がある.

航空ネットワークの関空への完全集約が必要なので,”口撃”されている通常型新幹線の関空乗り入れが必要であるばかりか,この地区から関空へのアクセス交通整備が必須である.JR宝塚線や阪急伊丹線,阪急宝塚線など通勤鉄道線が近隣に複数あるほか,山陽新幹線も近いので路線をちょっと曲げれば新幹線駅を設置することも困難では無い.高速道路も至近である.大阪や阪神圏の市街地にも近い.ただし,ここを転用してしまうと京阪神圏の空港は全て海岸地帯になり,地震災害時には同時に空港が使えなくなる可能性がある.

【万博記念公園案】
結構便利な位置だが,公園をつぶすことにはいろいろ意見が出そう.

高速道路は至近であり,モノレールや通勤鉄道もある.万博開催期間中には地下鉄が臨時で延伸されていたこともあるので,その気になれば地下鉄もOKであるほか,阪急千里線も近い.新大阪はやや遠いので,東海道新幹線をひん曲げるか,これからつくるリニアの経路をひん曲げるかする必要があるかも.空港は大阪空港まで割と近いものの,関空へのアクセスの課題は多く,迅速な移動が難しい.

【陸上自衛隊信太山演習場案】
やや南北に細長いが面積はある.自衛隊の移転が必要.

近隣に阪和線や泉北高速鉄道線があるので,通勤輸送の確保は何とか可能そうに思える.高速道路はすぐ横を走っている.だが,広域アクセスは課題が多く,新大阪は結構遠いため,リニア新幹線を延伸してここまで引き入れるか,例の”口撃”されている通常型新幹線の関空乗り入れ線をこの地区経由にする必要があると思われる.山陽新幹線方面からは,なにわ筋線を新幹線対応で建設してここまで直通させる必要がある.

以上が大阪府下のまとまった土地であろう.いずれも一長一短である.


神戸〜阪神都市圏方面では,まとまった土地が無さそうなので,東方向で探してみる.

【巨椋池跡地案】
大阪市の北東で京都市の南方,木津川,宇治川,桂川の三線が合流する地点の東側であり,かつては巨大な池があった地区である.現在は干拓されて広大な田んぼになっている.

通勤鉄道は京阪と近鉄が近傍を走っているので,その気になれば線路を敷きかえることは可能であろう.高速道路は東西南北に走っているので問題無し.広域アクセスの面では,新幹線駅がやや遠いので(奈良の人には叱られそうだが)ここを副首都にするならリニアはここを通した方がいいだろう.だが,空港については伊丹,関空ともに遠く,北陸新幹線を大阪につなぐ際の経由地としてこの地区を指定した方が良いと思われる.だが,最初に書いたように,この土地はもともと淀川水系の三線合流地帯の巨大沼地であったところなので,地盤が良いとは言いがたく,水害の危険性も高そうなので,あまり高度な利用には向いていないと思われる.

【陸上自衛隊祝園分屯地】
河川近くの沼地がダメなら,じゃぁ丘陵地はどうだろうか.上の巨椋池から10-20kmくらい南に行くと京阪奈丘陵というほぼ手つかずの丘陵地帯がある.その中の国有地はというと,大面積なのはやはり自衛隊がらみである.

ここを転用するには自衛隊の移転先が必要である.近隣の丘陵地帯も手つかずに近く,大面積の確保はしやすい.通勤鉄道は周辺に複数あるが,支線等の延伸は必要である.いずれの線も高速運転向きではないので,大阪市内までは時間がかかる.既存の新幹線駅は遠いので,これからつくるリニア駅はここへのアクセスを念頭に設置する必要がある.奈良市にも近いのでリニア奈良駅とすることもできる.また,北陸新幹線を大阪につなぐ際の経由地としてこの地区を指定した方が良いと思われ,一部の試案にあるように,北陸新幹線と関空アクセス新幹線を接続して空港アクセス鉄道とすることが有効と思われる.

【陸上自衛隊長池演習場】
祝園の近くには長池という演習場もある.ここは他よりやや狭い.

演習場の移転先が必要という点を含めて,上の祝園とよく似た状況である.通勤鉄道はJR奈良線くらいしかない.

以上のように,大阪湾の埋め立て地と巨椋池の埋め立て地とは論外として,大阪府下および周辺にはいくつか候補地はありそうである.


初夢鉄道答え合せ(東海道新幹線編)

続いて東海道新幹線編の答え合わせである.

左寄りのマスコミがいろいろ揶揄していたことに反し,開通したリニアは好調である.だがその陰で従来の東海道新幹線をどう活用するのかが課題になっている.

リニアの議論の陰で,今後の東海道新幹線をどう活用するかの議論があってしかるべきなのだが,そういう話はまだ始まっていない.人口減少社会に突入している状況下において保持するインフラの量が倍増する鉄道会社にとっては,旧来のインフラをどのように活用してどのように増収につなげてゆくか,それは鉄道会社の今後の盛衰を左右するほどの生命線のはずである.放っておいても客が増えると思ってるんだろうか?

東京駅で東北新幹線とスルー運転できたおかげで,…同時に北関東にも東海道新幹線の列車が折り返すための設備を設置した駅が新設されている.

残念ながら東海道新幹線の活用策の議論が進まないので,スルー運転の話も無い.

こういった折り返し設備を活用して長距離列車が首都圏スルー運転されるとともに,時速200km/h運転の快速電車が新幹線線路上で運転されるようになった.この高速快速電車は,車両は英国のclass-395のような列車で,….

かつて,全国新幹線鉄道整備法に基づく基本計画が策定される前は,首都圏において主要各方面に高速通勤新線が計画されていた.東海道新幹線の活用策についても通勤輸送の話があるのかもしれないが,そろそろ新駅計画を含めて話が進んでもいい時期じゃ無いかと思う.(…が,何も動かず)

線路容量に余裕のできた東海道新幹線では,物流サービスも始まっている.少子高齢化の進行に伴い,高速道路を走行するトラックの運転手の確保が問題になっている.

トラック(やバス)の運転手不足は深刻化しているようである.

自動運転技術も進行して高速道路上のトラックのカルガモ走行も実用化されてきているが,異常気象時への対応や非自動化車両との干渉などの課題が完全に解消されておらず,隊列走行による運転手の削減は限定的である.

車の自動運転技術は日々向上しているようであり,比較的道路状態が安定している高速道路については結構自動化の実用化は近いかもしれない.

そこで,東海道新幹線のこだま号のように各駅に停車して荷物を積み卸しする列車が設定されるようになり,高速軽量貨物の輸送に活躍することになった.荷下ろしは自動化されており,サービス開始前に懸念されていたほど停車時間は必要ないようである.重量物は依然としてトラックか在来線の貨物列車で運ばれている.

残念ながら新幹線鉄道網を活用した物流サービスについては,全く話が進んでいない.Amazonがドローンで物品配達しようとしているご時世なのに,である.

東海道新幹線は2015年以降285km/h運転が徐々に導入されたが,その後,一部の直線の多い区間を中心に部分的に300km/h運転が導入されている.だが,曲線が多いので数分の時間短縮にとどまっており,画期的な時間短縮にはなっていない.

東海道新幹線の285km/h運転は(あまり大きな話題になっていないが)始まっている.全列車が285km/h運転に移行した後は,もしかしたら本当に部分的に(例えば米原−京都間などで)さらなる高速化が行われるかもしれない.

リニア開業後の東海道新幹線は,当初は京都と横浜の人々が…ふたを開けると京都発着の客は名古屋駅でほとんどリニアに乗り換えてしまっており,横浜の客も品川駅に向かっているので予想よりも旅客が少なく,けっこう空席の目立つ列車が多い.…リニア橋本駅への出やすさが売り文句になっているようだ.商業ビルについても似たような傾向に見える.

まだリニアは開業していないので,この辺の客の流動変化については何とも…

線路容量がずいぶん空いているので,大阪近辺では関空アクセス列車はリニアではなくて東海道山陽新幹線の支線として建設した方が良いという議論になり,北陸新幹線も乗り入れることになった.…

私案レベルでは北陸新幹線を関空新幹線と直通運転すべしなどという話が出てきている.

当初はリニアと東海道新幹線で半々の客を受け持つ予定だったが,結果はリニアは大人気.あれだけネガキャンしていたマスコミの人々も手のひら返しで賞賛している.東海道新幹線は静岡と京都と北陸方面の人のための支線新幹線のようになってしまい,国土の構造が変わってしまった.

北陸新幹線は開業前はいろいろと揶揄されていたが,実際に開業するとテレビ番組は金沢特集だらけ.はてさて,リニアはいかに.

つづく

大阪は副首都になれるか(平常時編)

副首都なる機能を大阪に置くことが適切かどうか,いろんな面から考えてみよう.副首都は国家機能なので,単なる大阪の地域振興事業ではない.すなわち,大阪の人さえ良ければ良いというものではない.多面的検討は必要である.

まずは何も特別なことは起きていない平常時の場合についてである.

普段の平和な時期における大阪の位置は悪くない.東京からは適度に離れており,西日本に対しての地理的な距離自体は比較的近い.加えて,東京よりもアジア各国に対して若干近く,アジアのゲートウェイ都市になりうるポジションを占めることもできる.

だが,東京が国内の東日本に対して陸路のアクセスがほぼ完璧になってきているのに対し,大阪の広域アクセスは弱く,九州や四国の人々が一堂に会するには東京が便利,などという笑えない状況は続いている.

大阪を中心とする広域道路ネットワークについては,一部まだ工事中/未着工区間もあるものの概ね先が見えている状態である.だが,トラックや観光客はともかく,ビジネスマンが道路を使って広域移動することは希であるので,大阪を中心とするビジネス広域交通は今ひとつであると言える.

つまり,平常時における副首都大阪としての大きな課題は,国内広域アクセスであり,具体的には中央,北陸の各新幹線の完成はもちろん,四国新幹線や山陰新幹線などのネットワークをも完成させることが必要である.同時により遠方の国内や国際交通を担う航空ネットワークの要である空港アクセス時間の短縮も必要である.(逆に,こういった広域公共交通ネットワークを充実させることができないと,副首都には厳しいということ)

なお,関空アクセスについては,これまでにリニア新幹線や通常型新幹線の乗り入れ,あるいはなにわ筋線といった提案がなされているが,リニア新幹線は単線だと役に立たず,かといって複線だと兆単位近くの投資が必要で厳しい.なにわ筋線については新大阪からノンストップで40分などという試算もあるようだが,現状でも1駅停車で48分で到達するので,2000-4000億円の投資の割には効果がマイルドすぎる.なにわ筋線での関空アクセス構想を自画自賛してらっしゃる方もいるが…あんまりインフラプロジェクト構想のセンスないよね.バックのブレインを変えた方がいいと思う.

ちなみに,関空への通常型新幹線乗り入れ構想を”口撃”している人もいるが,フランスのTGVはシャルルドゴール空港に乗り入れているし,ドイツのICEはフランクフルト空港に乗り入れている.スイスのインターシティーはチューリヒ空港やジュネーブ空港に乗り入れているし,オランダのスキポール空港へはTGVの国際版のタリスが発着する.ロンドンのヒースロー空港へは新幹線のような列車こそ走っていないが,ヒースロー急行という準高速鉄道が乗り入れている.フランスやドイツには航空便名の付いたTGVやICE列車が走ってさえいる.

センスのないインフラ構想って恥ずかしいよね.


初夢鉄道答え合せ(リニア編)

さて,年末になってきたので,今年の重大ニュースを振り返ってみよう…と言いたいところだが,単に振り返ってもつまんないので,年始に見た夢が正夢だったのか,逆夢だったのかをチェックしてみよう.まずは,リニア編である.

こんな夢を見た.その夢の中では,リニアの東京-大阪間はもちろん完成している.使いにくいと言われた品川駅はサブターミナル化し,リニアは東京駅に乗り入れている.あまりの所要時間の差があったため,東海道新幹線を使う人が少なくなり,東京駅には14-19番線の6線も必要なくなった.そこで14-15番線だけ残して残りはリニア用ホームに改造されている.14-15番線も東北新幹線と直通できるように配線変更されて首都圏内はスルー運転されており,もはや東京行きあるいは上野行きなどと言った新幹線は珍しくなっている.

リニアの大阪延伸(同時開業)の話は,残念ながら進んでいない.政治家の皆さんは「同時開業」を異口同音に唱えるが,誰も具体的かつ有効な策は打ち出せていない.最近,コンセッション方式なる方法を唱える経済学者もいるが,それって当サイトで1年半以上前に書いた方式の一つ(No.1)だよね.他にも案があるよぉ.

リニアの東京側ターミナルに関しての計画の進化はないので,「初夢」が正夢か逆夢かの判別はついていない.東北新幹線系統と東海道新幹線系統のスルー運転も,見えていない.技術的にはそんなに難しい話じゃないんだけどね.

続いて…

致命的な被害はなかったものの,首都圏でM6クラスの直下地震が発生したことを機に首都機能の本格的な受け皿を関西に求めることになり,ある程度まとまった土地が探された.その影響もあり,リニアの名古屋以西ルートは京都と奈良で揉めていたが,京都でも奈良でもない場所にリニア駅ができることになり,同時に副首都駅になった.副首都機能の稼働開始間もなくして大地震と大津波が太平洋岸を襲い,静岡県下の東海道新幹線の海岸に近い区間では復旧に数年以上の期間を要する被害が出ている.新幹線の線路を内陸に付け替えるべきかどうかで議論が出ているようだが,結論は出ていない.

幸い,今のところ首都圏の直下大地震は発生していないので「正夢」にはなってはいない.がしかし,大地震の危機は過ぎ去ったという話は聞かれない.2011年からもうすぐ5年,そろそろ「のど元過ぎれば熱さ忘れる」ような状態になりつつある.

リニアの名古屋以西についての進展はないので,ルートについても(表面的には)何も進んでいない.「副首都」に言及する政策案を提言する政党も出始めているが,現時点では防災を意識しているのかそれとも関西の振興策なのか判然とせず,目的がぶれたレベルにとどまっている.

首都圏直下地震と南海トラフ地震は独立事象ではなくて連動する可能性が否定できないが,現中央政府は有効な対策を打ち出せないまま5年を消費してしまおうとしている.大阪地方政府も数年を消費したが,かけ声の勇ましさに比べて成果は少ない(というか,「黒歴史」に近いプロジェクトがいくつかあった).

それから…

終点は大方の予想どおり新大阪駅になった.関西空港への延伸の要望はあったものの,空港アクセス客を運ぶほど線路容量に余裕がなるわけではないことが分かってきたため,関空アクセスの改善は別の方法が採用されることになった.航空ネットワークと鉄道ネットワークの結合政策の影響もある.

リニアの西進に手が着いていないので,リニア大阪駅の位置も公式には出ていない.関空アクセスリニア案がお話にならないのは,「夢」を検証するまでもない.

さらに…

リニアは500km/h運転で営業開始されたが,開業後も数々のデータやノウハウが蓄積し,もう少しスピードアップできることが分かってきた.東京-大阪間67分であったものをほんとうに1時間で結ぶべく,600km/hでの営業運転が検討され始めており,試験運転では700km/hも記録されている.

リニアの速度向上の話は現時点ではまだ時期尚早のようであり,「正夢」には至らず.

リニアの完成により三大都市圏のリニア駅の拠点性が高まったので,全国的な幹線鉄道網の再編の気運が盛り上がってきており,同時に便利な鉄道網と航空ネットワークの結合も実現しそうである.

これについても,何の議論もされておらず,この国には幹線鉄道のまともな国策は無いようである.

つづく

 

円借款の条件緩和、首相が表明へ…中国に対抗

こういう話があるようだ.

 政府は、新興国にインフラ(社会基盤)整備などの資金を貸し付ける円借款について、現地政府の保証を必須要件から外すなど抜本改革を行う方針を固めた。

情報源: 円借款の条件緩和、首相が表明へ…中国に対抗

適切なインフラ整備には適切な費用負担が必要.それとも,支払えない場合には当該施設を借金のカタに接収するのか? そういうわけにはいかないよね.そんなことしたら「侵略だ」と言われかねない.

彼らが負担できる範囲での最良の良質なインフラを提供するのがいいのでは? でないと,「オーパーツ」的なインフラがいきなり登場しても管理も運用もできないかもしれない.

売りたい物≠買いたい物

相手の身になってインフラを考えて提案しようよ.戦後の我々が必要としていた物は何だったか,思い出せばいいのではないのかな.

 

三線軌+単線並列

「ミニ新幹線」の線路を観察してみよう.区間は奥羽本線の秋田−大曲間である.

写真中央の線路は狭軌(軌間1067mm),右は標準軌(軌間1435mm),右の線路の奥には「新幹線」の車両が走っている.この区間は基本的には狭軌と標準軌がそれぞれ単線で敷設されているという珍しい形態である.

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右の標準軌から分岐した線路が狭軌をクロスして,左側の車庫へとつながる.

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車庫には標準軌用のローカル線電車が置いてあるので,このあたりでは普通電車は狭軌と標準軌の2種類あるようだ.運用がめんどくさそう(JR東日本て,割とめんどくさい車両運用を平気でやってるよね.).

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単線並列なので,信号機もそれぞれの線路に設置されている.そんなわけで,線路の幅の違いさえ無視すれば,まるでヨーロッパの線路(*)のような感じである.

(*)ヨーロッパでは単線並列が普通なので,複線区間では2線ともに信号機が建っている.

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「新幹線」ではあるが,車両サイズはミニ,つまり在来線規格相当なので,トンネルがあっても掘削しなおすこと無く,元々のトンネルがそのまま使える.経費節減.

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途中の小駅は,ローカル列車が発着するホームだけ.「新幹線」は通過なのでホームが無い.経費節減.

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「新幹線」用の線路には,当然ながら時々「新幹線」が走る.

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単線区間ばかりでは上下列車の交換に不便があるので,一部の区間は非常に珍しい三線軌になっている.写真奥に写っている片渡り分岐器は「新幹線」だけが通る.ここから先は,当分三線軌が続くので「新幹線」は走りながらすれ違える.

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橋梁も在来線のものを流用できるので,経費節減.ただし,単線用の橋梁は重心がずれたりするので,使えないこともあるらしい.

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他ではなかなか見られない珍しい分岐器.

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なかなか快調に走る.

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そして,三線軌区間は終了.

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変電所も在来線と同じものを使えるので,経費節減.

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今さら言ってもしょうが無いが,西日本方面でもつべこべ言わずにさっさとミニ新幹線を導入しておけば良かったんだけどねぇ.

一方,そうこうしているうちに東北方面では次の段階へ進もうとしているのであった…

 

羽越新幹線用の空間

有名な話なので,今さらであるが…

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上越新幹線の長岡駅の新潟方面ホームには,「線路予定地」がある.

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富山方面から柏崎などを経てここでいったん上越新幹線と合流するということか? この空間が本来目的で使われる日は来るのだろうか?