鉄道で国づくり」カテゴリーアーカイブ

Web鉄道記事の精度(東洋経済編-2)

精度の悪い記事のチェックはつづく.

情報源: 注目浴びる「路面電車」、実は非効率だった! | 鉄道最前線 | 東洋経済オンライン

2ページ目.「路面電車」が遅い原因についての説明が続く.

最高時速はわずか40キロ

まぁ,正しいんだけど,最高速度が遅いからAGT等より遅いわけではないのでね. AGTやモノレールはせいぜい50km/hなんだけどね.「路面電車」が遅いのは平均駅間距離が300m程度と短く,AGTやモノレール(あるいは地下鉄)が約1km間隔なのに比べて「最高速度」で走る距離が短いんだよね.その反省もあって,「LRT」は平均駅間を「路面電車」の倍程度に設定してるんだが,この「鉄道ジャーナリスト」は知らないんだろうな.

特に広島電鉄の時速8.8キロメートルなど、自転車が瞬間的に出す速度よりも遅く、渋滞に巻き込まれればさらに表定速度は下がるであろう。

広島は渋滞に巻き込まれないように,軌道敷内への乗り入れを厳しくしている都市で有名なんだけど…

3ページ目.さらに「路面電車」が遅い原因についての説明が続く.

スピードアップのためには列車が近づくと信号が青に変わるような方策が考えられるものの、他の交通との兼ね合いから完全には実施できない。

海外の「LRT」ではやってますが.自動車社会の権化である米国ですら,日本のPTPSより強力な優先信号が導入されているのを見たことがありますけど.

結局のところ、道路上を走らないようにすれば解決するのだ。

「LRT」がバリアフリーの観点で注目され,成功してるということを知らないんだろうな.地下や高架にしたり,繁華街から離れたところを走らせると,歩行者の利便が大きく損なわれるんだけど.東急世田谷線を褒めているが,あれと同じものを新規に整備しようとすると警察から「踏切の新設はまかり成らん」とか「高架か地下にしろ」になっちゃうんだけど.

事故1件当たりの列車キロは路面電車が33万2847キロメートルに対し、新交通システム、モノレールでは事故そのものが起きていない。さらには、JR旅客会社や大手民鉄、地下鉄と比べても事故が起きる頻度は高いと言える。

比べるなら,バスや自家用車と比べるべきじゃないかな?

路面電車の事故で最も多いのは、道路上の車両や歩行者と衝突または接触する道路障害事故だ。事故全体の77.7パーセントを占める56件が発生しており、解決策としてはやはり道路上を走らないようにするほかない。

地下鉄か高架にしろってか? それができないから「LRT」という話になってるんだが.道路障害事故の多くは自動車による進路妨害に起因するもの(路面電車は第2当事者)ではないでしょうかね.欧州では中心市街にそもそも自動車を近づけないような工夫がされていることが多いんだけどね.

鉄道ジャーナリストは,中心市街の路面は自動車に譲るべきだと考えているんだろうか.恐ろしいネガキャンだな.

(つづく)

Web鉄道記事の精度(東洋経済編-1)

こういう記事がある

都市の道路に敷設されたレールの上を颯爽と走る路面電車。その経済性について多角的データから分析する。

情報源: 注目浴びる「路面電車」、実は非効率だった! | 鉄道最前線 | 東洋経済オンライン

ここのオンライン記事,鉄道を良く取り上げるのだが,応援しているのか足を引っ張っているのか良くわからないことが多い.

今回の記事を書いているのは,専業の「鉄道ジャーナリスト」だが,うーん,ジャーナリストを名乗るには少々不勉強な感じがしてならない.有名な人なんだけどね.

じゃぁ,記事をチェックしてみよう.(いろいろ仕事が立て込んでいるので,ちょっとずつ)

まず,1ページ目

近年になって路面電車をLRT(Light Rail Transit、低床式車両を活用した交通システム)へと転換させようとする動きも見られる。

LRTが「低床式路面電車」という認識は,10年ほど前,国土交通省があんまりLRTのことをよく理解していなかった時代に見られた記述である.低床式電車を使うことは確かに多いのだが,「LRT=低床式路面電車」ではない.

しかし、全体的な傾向としてみれば路面電車は旧態依然のままであり、21世紀の都市にふさわしい姿へと変化を遂げていない。

これは確かにそうだな.続いて「路面電車は自転車よりも遅い」という話題が続くのだが,それに関してこう書かれている.

…路面電車と同等の輸送力をもつ新交通システム(ゆりかもめなど)やモノレール、トロリーバスと比較しながら検証していこう。

LRT(ただし欧州で走っているようなものであって,富山タイプは標準よりもかなり小型)はAGTやモノレールと同等だが,旧態依然とした「路面電車」の輸送力はAGTやモノレールには及ばない.ましてや「トロリーバス」は輸送機関としては単なるバスであり,何か他の交通機関と混同して記述しているのかしら???

最初の検証項目は速達性だ。路面電車という乗り物は道路上をのんびりと進むというイメージをもつ。…新交通システムやモノレールと比べると著しく低い。

まぁ,確かに遅いが,それを以て,サブタイトルの「全国のLRT導入ムードに暗雲も」が出てくるのは意味不明である.路面電車の性能が低いから既存路面電車のLRT化が提案されているんだが,印象操作か? それとも目立てばいいという,それだけか?

(つづく)

何に使うのかわからない電光掲示板

駅のホームには何に使うのかわからないランプや電光掲示板があったりするが,1つ使い方がわかった.

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1本前の電車の床下から煙が出て,隣の駅で止まっているらしい.信号機そのものは進行を示しているが,列車を駅間に止めないために表示して駅に留め置くようである.

なお,床下から煙から出た電車は四条畷駅まで何とかたどり着いた後,乗客を降ろして運転終了になった模様.

県境を越える普通列車

ちょっと前の時刻表だが,基本的には今も変わっていないと思う.

山形県の米沢駅のホーム上の時刻表である.福島駅方面への県境の峠部分を越えてゆく普通列車は,朝1本,昼1本,夕方2本,終電(20時台)の以上5本である.

「つばさ」が毎時1本ずつ走っているので,路線としては決して閑散路線ではないが,普通列車についてはこういう状況である.

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新幹線が建設されようとする路線では,しばしば並行在来線の問題がクローズアップされるが,特に厳しい状況に置かれがちなのが県境部分である.日常的に人の往来が少ないので別々の県に分かれた,とも言える部分である.

新幹線化にあたって,こういった県境部分をどうするかは頭の痛い問題であり,例えば熊本-鹿児島県境部分や新潟-富山県境部分では,電車が走れる設備があるにもかかわらず,経費を最小化するためにわざわざ短い編成のディーゼル列車を運転しているし,青森-北海道部分ではずいぶん前から普通列車が無くなってしまっている.群馬-長野県境では,碓氷峠部分に特殊な機関車の維持が必要ということもあり,線路が無くなってしまってバス転換された.

だがまぁ,通しの列車が片道5本の米坂線が生き残っているんだから,方法はあるのかもしれないけどね.

レールのケーブル

電車は電気で走る.交流電化は電圧が高い分,電流は小さいという.逆に直流電化区間は電圧が低い分,電流が大きめである.

では,下の2枚は交流電化区間の継ぎ目? それとも直流電化区間の継ぎ目?

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答えは,上が交流電化区間,下が直流電化区間である.レールの継ぎ目部分のレール間を結ぶワイヤもそれが反映されていたりする.

 

C11もよく見るとかっこいいぞ

福知山駅前に置かれている機関車.C11といって,石炭を積載する部分が機関車と一体になっている小型機関車である.ぱっと見は小さくてかわいい,といった感じであるが,本線で特急列車を引っ張っていたC62や貨物列車を全国で牽いていたD51ほども人気があるとは思えない.

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主な用途は短距離の短い編成の列車らしい.「らしい」と書いたのは,私の地元では貨物列車はD60,旅客列車はC58やC57が引っ張っていて,この小さな機関車の記憶は無い.(…確か,小学校入学前まではSLが走ってました.)

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小さな機関車のなので,軽い.

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かわいい機関車も,こういうアングルだと,迫力がある.

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動輪もいいぞ.

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後ろ姿も,なかなか.

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…そんだけ.

北陸新幹線京都経由望ましい(試算結果の読み方編)

続きである.

北陸新幹線の敦賀−大阪間のルートに関する試算結果については,これが比較的有名であり,国土交通省の方はルートが複数あることを認めただけで具体的な検討をしていないというのが実状である.

http://www.kouiki-kansai.jp/contents.php?id=1019

http://www.kouiki-kansai.jp/data_upload/1362710126.pdf

この試算結果については,建設費概算の合計額部分,つまり小浜ルートが9500億円,湖西ルートが7700億円,米原ルートが5100億円という部分が注目を浴びがちである.よく見ると,湖西ルートと米原ルートについては6200億円とか3600億円という数字も見える.

これは車庫線・回送線1500億円を建設費に入れるか入れないかで数字が変わるということである.

ところで,この車庫線・回送線がいったい何なのかについて正しく理解している人が少なそうなのが残念なところである.

ちょっと別のように聞こえるが,ヒントは東海道新幹線の品川駅である.品川駅が無かった頃,東海道新幹線の増発のネックは東京駅と車両基地の間を走行する回送列車だと言われた.回送列車が東海道新幹線の本線の列車容量を食ってしまい,わずかな区間の列車容量不足のために全線にわたって列車を走らせることが出来ない,というものであった.

そこで,回送列車が走らない位置,つまり品川に駅を作れば品川−大阪間に列車を増発できるようになる,というロジックであった.実際には保安装置の性能向上により,ごく希な例を除いて品川発着の新幹線は設定されていないが,一応,品川駅は列車容量増加策であった.

ところで,大阪側はというと同じような話がある.新大阪駅と鳥飼にある車両基地の間に回送列車が走っており,ここの線路容量がけっこう厳しい.品川駅設置が議論されていた時期に新大阪と鳥飼基地の容量が問題にならなかったのは,新大阪近辺の線路容量と東京駅近辺の線路容量が微妙に異なっていたからであった.

東京駅の線路容量は東京駅の品川寄りの分岐器の制限速度がネックになっている.新幹線の分岐器の制限速度は70km/hが原則であるが,東京駅構内については用地が手狭なことなどが影響して60km/h制限になっている.一方,新大阪駅の構内の分岐器については規格通りの70km/h制限なので,東京駅南西側の線路容量<新大阪駅東側の線路容量であり,品川駅のような話にはならなかった.

さて,話を北陸新幹線に戻すと,ルートの建設費の部分に書かれている1500億円というのは,新大阪と鳥飼基地の間の線路容量を緩和するための回送線の建設費のことである.北陸新幹線の電車を米原や京都から東海道新幹線に乗り入れさせようとすると,鳥飼車両基地の東側までは何とか走れるのだが,そこから先の線路容量が厳しい.

そこで,鳥飼基地に出入りする回送列車の一部を専用の回送線に逃してやることが出来れば,本線の線路容量が空くことになり,乗り入れが可能になる,というものである.北陸新幹線の電車の分の容量を稼ぎ出しさえすればいいので,回送線は単線でも充分である.(もちろん,リニアの大阪開業で東海道新幹線の容量自体に余裕が出来るのならば,この1500億円は要らない.)

あんまり理解されずに数字が勝手に独り歩きしているようなので,ご注意を.(特にマスコミで理解している人が少なそう.ちゃんと説明しているのを見たことが無いけど,当の広域連合も理解してるのかしら?)

なお,「北陸新幹線と東海道新幹線では運行システムが…」という意見は良く聞くが,「運行管理システムの改修費用<建設費の差分」ならば,やはりルートの検討は重要である.システム改修費用って数千億円もするのか?

あと,「電源の周波数ガー」「ATCの種類ガー」とかいう話もある.だが,電気系統については,そういう仕様で発注してくれれば何とでも,というのが車両メーカーの感触である.(そうだよねぇ,その程度で車両設計できなくなるレベルだと,電源電圧や周波数が何種類もあって,信号システムが統一されてるようでされていないし,車両限界も微妙に違う欧州ではビジネス出来ないよね.)

つづく

北陸新幹線京都経由望ましい(米原ルート編)

こういう記事がある.

北陸新幹線の敦賀-大阪間のルートに関して,関西の財界も新しい案に興味を示しているという記事である.
情報源: 北陸新幹線「京都経由望ましい」 敦賀以西ルートで関経連会長 : 京都新聞

全国的な視点では,敦賀-小浜-大阪を最短で結ぶいわゆる若狭ルートとか小浜ルートと呼ばれる原案よりも,敦賀-米原を短絡するいわゆる米原ルートの方が工事費が安くて建設期間が短く,完成が早い.

米原ルートは工費を安く出来る分,資金を他の新幹線建設に回せる可能性があり,(西日本の関係各府県にとっては必ずしも望ましくないこともあるが)全国的視点では望ましい.

しかし,数年前から注目されているこの米原ルート,ご存じのとおり(今でも線路容量的には不可能では無いと思われるが)JR東海が東海道新幹線への乗り入れに難色を示しており,実現が難しそうである.

東海道新幹線については,リニアが西まで延びた段階で,いずれ余裕の出来るインフラである.将来的には東海道新幹線沿線といえども人口は頭打ちから減少に転じ,その状況下で東京-大阪間にリニアと東海道新幹線という2つのインフラを抱え込むことになる.

民間会社としては,将来的な需要を自社路線に呼び込む装置作りもしておかなければならないはずであるが,そういった視点は持っていないようである.斯くして,JR東海は,いずれかき集めなくてはならないはずの将来の旅客を逃そうとしている.

リニアができることで,西日本各県からの航空旅客から客を奪うことをアテにしてませんか? 西日本の人口減少は東海道新幹線沿線の比じゃないんですけどね.

(つづく)

 

機廻し線

構内配線シリーズである.KTR豊岡駅.ホームが1面しか無いが,線路は2線ある.ホームへの進入時に見ると,こんな感じ.

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2線ある線路は,ドン突きで再び合流している.ご存じ,機廻し線である.最近はなかなかこんなにきれいな形で残っていることも少ない.

その昔,機関車が引っ張ってきた列車はこの駅で終点.機関車だけ切り離してドン突きまで機関車が進み,ホームの無い線路を使って引っ張ってきた客車の反対側へ.

そして反対側に機関車を付け直して反対方向に出発.

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無粋な話をすると,どうせ機関車列車なんてもう走らせないんだから,このドン突きの合流部分の線路を引っぱがしてホームの無い側にもホームを作れば,頭端式のターミナル駅になり,やはりダイヤの作成が格段に楽になる.

機廻し線,無くなっちゃうけど.

ちょっと悔やまれる構内配線

KTR宮津駅の構内配線のお話.下の写真は宮津駅の西側を写したものである.

奥へと線路が2本延びているが,右は宮津線天橋立方面,左は宮福線福知山方面である.ホームは3面4線になっており,写真左側(奧)から右(手前)へと順に,[4番線]福知山方面からの折り返し用,[3番線]福知山方面←→天橋立方面直通用,[2番線]宮豊線天橋立方面,[1番線]宮舞線西舞鶴方面というのが標準的な使い方である.

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さて,何がちょっと悔やまれるかというと,2番線の天橋立方面の線路をそそのまま西に進むと,3番線からの合流,安全側線,1番線と合流し,天橋立方面に進む.この安全側線であるが,そのまま宮福線福知山方面への渡り線になっていれば2番線と3番線の両方を福知山方面←→天橋立方面直通用に使えて,ダイヤの組み方が断然楽になる.

元々,宮福線を電化して高速化する際には2番線と3番線の間の片渡り部分は両渡りで計画されていた.片渡りに比べると両渡り(シーサスクロッシング)は非常に高価なので,工費の節約のために片渡りに変更されてしまった.原案どおりなら,やはり2番線と3番線の両方を福知山方面←→天橋立方面直通用に使えた.

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今さらながら,ちょっと悔やまれる構内配線である.

(…という,ちょいと細かすぎるネタ)