山陽新幹線の起点はどこかというと,「新大阪」と答えるのが常識だろう.
ところが,小倉駅の新幹線乗場の線路際にはこういう小さな標識がある.
これは新大阪からの距離じゃなくて,東京駅からの距離だよね.下の写真の場所が基準.
営業上は「山陽新幹線」だが,施設管理や交通システム上は「東海道山陽新幹線」という1つの路線の西半分ということだね.
#時刻表等では東京から小倉までは1107kmあることになっているが,これは運賃計算用で,上の写真は実際の物理的な距離.
300km/hで通過する新幹線.曲線にはカントというレールの内外高さの差を付けてある.
山陽新幹線以降の新幹線ではスラブ軌道というコンクリート板に金具を介してレールを取り付ける方法が採用されており,砂利でできた銅賞を調整する必要が無いのでメンテナンスの手間が少ない.
逆に,カントのようなレール位置の微調整が面倒なのだが,どうやっているかというとレールとコンクリート板の間に挟む金具で調整しているようである.
下の写真には線路が2本写っているが,奥の線路はホームに面したせいぜい70km/h運転できれば良い線路,手前が300km/h運転対応の線路である.両者とも曲線上なのだが,明らかに両者違っている.
まず,そもそものコンクリート板自体が手前の線路のものは少し傾いているのだが,さらに手前の300km/h対応の線路のレールには金具が挟まれており,かなり浮いている.
下の写真だと,その浮いているレールの浮き具合が左右のレールで異なっているのがわかる.この差がカントである.
こういう話が定期的に出てくるのは悲しいことだが,声の大きな方は発言の影響の大さを良く理解した方が良い.リップサービスは真のサービスにあらず.
線路が欲しいのか,交流が欲しいのか,果たしてどっちなんだろうか?
- 福井新聞 http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/super_expless/71951.html
40年前の計画にこだわって数万の沿線人口確保のために147万(+226万)の沿線人口を放棄するのはあり得ない.
若狭ルートを推進するのなら「若狭を経由して,京都も経由しろ」というのが正しい姿勢だろう.新幹線は航空路ではないので,起点終点だけでなく沿線の主要都市がどこなのかがその後の沿線の盛衰に大きく影響する.
無いと信じたいが,よもや「山陰新幹線」と「北陸新幹線」とを部分的に統合してやろうというような野心を抱いているのではないでしょうね.もしそうなら,そうすることで実際の整備が数十年単位で大幅に遅くなる可能性のことを熟慮すべきだ.
再度掲載.各ルートの沿線人口を下図で確認を.終点までの所要時間が10分ほど短くなるとしても沿線人口が100万人200万人という単位で減るような案はあり得ない.ルート問題を未着工区間の沿線の問題として矮小化してしまっているようだが,案の選択によっては北陸地方全体の首を絞めることになる.若狭の開発には別のプロジェクトを組み合わせるべし.
「乗り換え」に関しても,関西広域連合の調査結果を理解できていない人が多そうだが回避策は調査結果に書かれている.さらに,リニアの大阪延伸が早期実現すれば「乗り換え」は確実に不要である.
あと,誰も指摘しないが,若狭ルートで新大阪駅に対して北方から東海道山陽新幹線と直交するように入ってくると(運行管理システム接続費用は省けるかもしれないが)山陽新幹線との直通は難しくなる.だが,湖西や米原のルートで東海道山陽新幹線とスルー運転できるようにしておくと,(システム接続費用はかかるが)山陽新幹線沿線都市と乗り換え無しで結ばれる可能性がある.
航空路と違って新幹線が優れているところは,交流の多様性なんだが.わかるかな?
こういう話がある.
- タイが自国で計画している高速鉄道をめぐり、太田昭宏国土交通相とタイのプラジン運輸相は27日、国交省内で会談し、日本の新幹線方式の導入に向けた調査を両国間で始めるとの覚書を締結し、同区間への新幹線導入で事実上合意した。開業時期は未定だが、実現すれば台湾新幹線に続く新幹線輸出の事例となる。安倍晋三政権が成長戦略で掲げるインフラの海外輸出にも弾みがつきそうだ。 情報源: タイ高速鉄道、日本の新幹線導入で事実上合意 インフラ輸出に弾み (1/2ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)
これは賢明な選択である.中国と受注合戦になっていたようだが,実は鉄道としての規格自体は中国の高速鉄道も日本の新幹線もあんまり違わない.
中国の新幹線の車両サイズは,中国の鉄道車両のサイズである.…で,中国の車両のサイズは昔の満州鉄道のサイズである.…で,満州鉄道のサイズに合わせて計画されていたのが戦前の日本の弾丸列車である.その弾丸列車を受け継いだのが日本の新幹線の列車サイズである.
要するに日本の新幹線のサイズ=中国の高速鉄道のサイズになっている.そんなわけで,東北新幹線電車の色を塗り替えただけに近い電車が中国には走っている.タイが日本の新幹線を選択したとしても,将来的に中国の高速鉄道に接続したくなった場合は大きさに関する障害なく接続できる.
ならば50年の歴史がある新幹線を選択しておくというのは,安全な選択である.
ただ,危惧しなければならないのは,日本の新幹線のサイズ=中国の高速鉄道のサイズなので,調査と設計だけ日本にさせておいて,そのままの図面を安価に中国に発注するということが(あまり大きな障害無く)できてしまうことである.
最後まで気を緩めてはいけない.まだ調査の合意である.
新下関駅には,将来のホーム増設用の構造物が一部存在している.
地上の山陽本線から見ると,新大阪方面の新幹線ホームのさらに西側にもう1線増設できるように準備されており,山陽本線との交差部分に橋桁を架けられるようになっている.
たぶん山陰新幹線分岐のための準備工事だと思う.「評論家」ならこれをネタに本の1章分くらいに膨らませて記事を書き上げるんだろうと思うが,実際問題としてはこの準備工事だけでは何ともならない.
昔の「とにかく新幹線を全国につくってしまえ」という時代ならともかく,今となっては山陰新幹線を建設するとしても,本当に新下関駅を分岐駅にして良いものかどうか,議論を要するんじゃないかと思われる.
情勢変化を織り込むための計画のPDCAって必要だよね.
こういう話がある.
- 豪雨や大雪による運休、遅れが多い山形新幹線の米沢―福島間に関し、JR東日本は本年度から2年をかけて、抜本的な防災対策の調査検討を始める。吉村美栄子知事が同社の.. 情報源: 山形新幹線・米沢―福島間で抜本的な防災対策 JR東、トンネル化も含め検討
通称山形新幹線こと奥羽本線と東北新幹線の直通特急(要するに「つばさ」)に乗ると,福島を出てしばらくすると割と急な上り坂が延々と続くとともに右へ左へとカーブも続く.
板谷峠であり,かつては専用の機関車があったくらい有名な日本指折りの難所である.ある程度改良されたとはいえ「つばさ」は基本的には昔と同じ線路を走る.山形”新幹線”は線路の幅(軌間)を新幹線に合わせただけで,基本システムは在来線のままである.なので遅い.
峠区間を過ぎても,別の種類の”難所”は続く.単線区間である.新幹線とは名ばかりで,線路が1本しかないので向かいから来る列車と時間調整をすることもある.
記事中の山形県知事の提案は,峠区間の再整備をするなら,いっそフル規格新幹線に準拠したインフラにしようという提案である.これはアリだ.
山形”新幹線”は,日本の厳密な基準では新幹線ではない.だが,欧州に行くと走っているTGVやICEを基準にすると,山形新幹線(および秋田新幹線)は立派な高速列車だ.
じゃぁ,TGVやICEがどうやって発展してきたかというと,実は部分的にまるで国道のバイパスのように高速新線をつくり,そうじゃない部分は古い線路をそのまま使って全体のシステムを構築してきた.日本的基準から言うと,TGVやICEは「ミニ新幹線」である.
ドイツやフランスに2-3年おきに出かけると,同じ都市間の移動でも訪れるたびにTGVやICEの走行経路が微妙に変わり,所要時間が少しづつ短縮している.
どういうことかというと,部分部分,少しづつ高速新線を新たに建設して年々年々少しづつ本物の高速鉄道に近づけているのである.つまり,この方式を「輸入」すれば山形新幹線や秋田新幹線は少しづつ本物の新幹線に近づけるという方法が採用できる.新幹線建設を待ちわびる他の地域とはひと味違った整備手法を導入できるのである.
整備費用の負担方法など,詰めるべき事項はあるものの,良いアイデアである.
#約20年前,とりあえず跡追いで同じシステム入れておけば何かと楽だったかも > 西日本方面各位
半年ほど前にこんなweb記事があった.
- ついに工事実施計画が認可された中央新幹線リニア。これを複雑な思いで見つめている面々がいる。 情報源: 「新幹線」をあきらめきれない面々 | 鉄道最前線 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
記事の内容そのものについては,近年の状況を述べているだけなので,さほど違和感はないのだが,軽い嫌悪感を感じるのはそのタイトルである.
「新幹線」をあきらめきれない面々
面々という表現は,単純には人々とか各方面とかそういう意味なのだが,近年の日本語の表現としては「懲りない面々」「浮かれる面々」「容赦ない面々」「無責任な面々」「奇妙な面々」など,やや冷淡に見ている場合に使われることが多い表現である.
そして,標題として「あきらめきれない人たちがいる」ということを取り上げると言うことは,裏を返すと「あきらめるのが普通なのに,あきらめない人がいる.これは変だね,取り上げてみよう」という意図が見え隠れする.
現在新幹線が走っている地域は,歴史的経緯からたまたま新幹線が走るようになった地域である.こう言うと反発があるかもしれないが,例えば関東平野は今でこそ日本の中心地域だが,かつては開発途上の野原であり,江戸期になって本格的に開けた地域である.もし江戸時代が始まろうかとしているその時期に,徳川家康が「幕府は尾張に!」と決めていたなら,首都は名古屋で,関東は今も寂れた地域だったかもしれない.
あるいは,明治の最初の鉄道が当初の思惑通りに中山道沿いに建設されていたら,最初の新幹線は中央新幹線で,今ごろ第2中央新幹線を東海道に沿って建設すべきかどうか議論がされていたかもしれない.
そういう点からすると,ちょっとだけ他地域に比べて開発が進んでいるからといって,「あきらめきれない面々」と書いてしまうのはやや上から目線ではなかろうかと思ってしまう.
この手の表現は形を変えながら時々大都市の人の口から出てくる.だが,今の状況はたまたまそうなっているだけなのかもしれない,という謙虚さは欲しいものである.この手の上から目線の話を聞くといつも思い出すのは,芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に出てくる犍陀多(かんだた)の事である.
とやかく言えるほど,エラいのか?
整備新幹線は260km/hでしか走れないという.
でも,よく考えてみよう.整備新幹線の260km/hは「最高設計速度」である.
構造物等を設計する際に,ある一定の車両が時速260キロ運転をすることを想定して力学的・物理的な諸元を設計しろと言っているに過ぎない.
つまり,整備新幹線の260km/hというのは「最高設計速度」という設計条件であって,「最高営業速度」に関する規制ではないということである.
営業速度は,本来は与えられた構造物(とシステム)に対して,安全に運転できる速度を別途考慮して設定されるはずなのだが,別途考慮が少々面倒なものだから,設計速度=営業速度に設定してしまっている(費用負担の再考問題も絡んでいる).
もしも「設計速度=営業速度」に設定しなければならないのならば,東海道新幹線をはじめとする整備新幹線以前の新幹線は,せいぜい時速250キロ運転しかしてはいけないことになってしまうが,現実はそうではない.
すでに完成している構造物に対して,構造物設計時とは異なっている現実の各種条件を考慮して再検討し,安全に運転できる速度を多角的に考え,その結果出てきた答えが285km/h運転であったり,300km/h運転であったり,320km/h運転だったりするわけである.
新幹線の速度向上は,新規整備に比べると安くて効果が大きいので,もっと前向きに検討しようよ.
#青函トンネル内の運転速度を貨物列車とすれ違わないようにして「260km/h」運転するらしいが,騒音の問題が発生するわけでも無いので,そこは「320km/h」でいいだろ.インフラの設計荷重も東北新幹線なみだろ?
こういう記事があった.
- 14日に金沢延伸する北陸新幹線は、2023年春ごろ開業予定の金沢-敦賀(福井県敦賀市)より西の未着工区間ルートが決まりそうにない。政府は1973年の整備計画で路線を東京-大阪としたが、敦賀-大阪は小浜、湖西、米原の3ルート案があり、議論は足踏み。国の財政状況は厳しく、着工は見通せない。(情報源: 北陸新幹線、「敦賀-大阪」どうなる? 3ルート案、議論は足踏み (1/2ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ))
北陸新幹線の工事は東側から「片押し」で進められており,2015年に金沢まで開業したあとは(現時点の公式予定では)2025年2022年に敦賀まで開業する.
このとき,その先の工事予定が具体的に決まっていないとどうなるかというと,建設予算は毎年毎年予算確保されるものであって積み立てられるものではないので,その時点で工事中の路線,つまり北海道新幹線(函館-札幌間が2030年開業見込)の早期開業にまわされたり,九州新幹線長崎ルートの全線フル化にまわされたりする.あるいは四国や東北方面の新規フル規格新幹線の着工にまわされたりする可能性もあり,これらの新規区間の完成が2040年代ということになることもある.
そうなると,それらの新幹線の完成を待って北陸新幹線の敦賀以西の工事が着工されることになり,北陸新幹線の全線開業が2050年代以降,などという,にわかには信じがたいほど遅くなってしまう可能性もある.
もっとおそろしいことは,北陸新幹線整備を担っている組織がいったん解散してしまい,具体的な整備担当組織自体が無くなってしまう可能性もなきにしもあらず.
関西の人って,その辺の意識薄いよね.
事務方からwebサイトをリニューアルするので写真を何枚か送れと連絡あり.テキトーに何枚か見つくろって送ったのはこんな感じ.採用されるかどうかは事務方の気分次第か?
まずは,鉄道の高架工事の現場.これはJR奈良駅の天王寺方であり,左に伸びるのが桜井線,右方向が関西本線である.
次は,どアップ過ぎて何かわからない鉄筋鉄筋また鉄筋.実は沈埋トンネルを陸上でつくっている段階のもので,このあとコンクリートが打たれて,現場に運ばれて,海の底に沈められる.
これは近所の高速道路.開通前に沿線住民にお披露目された際のもの.
東海道新幹線の橋梁で,浜名湖を渡るものを水面スレスレからのアングルで撮ったもの.
こっちは国土のバイパスの橋梁で,例の今切れ口に架かる浜名大橋.
秋田行きと青森行きがKiss.
工事中だったころの九州新幹線.場所はJR西日本の車両基地の横.
実は道路鉄道併用橋の大鳴門橋.
こっちは日本における元祖長大吊り橋である関門橋.
そして,天満橋から見た大阪ビジネスパークの風景.船がやってくるのは1時間に一度で,さらに京阪特急がすれ違うのを寒空の中待ち続けたのは十数年前.
このほかにも,防潮堤とかお城の石垣とかも送ったが,以下略.