月別アーカイブ: 2014年8月

CANADIAN RAIL(VIA RAIL CANADA編)

カナダの旅客鉄道は,VIA Rail Canadaといって,カナダ国鉄(CN)とカナディアンパシフィック鉄道(CP)の旅客部門を統合して設立された公社である.なぜ「VIA」なのかは定かではないが,クルマ社会にやられて,社名に「クルマでなくて鉄道でね」という意味を込めたかったのであろうことは容易に想像が付く.「via」は「by way of」の意味を持つ前置詞である.
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さて,このVIA(というかカナダ)の列車であるが,かつては新幹線の刺激をうけて運転された「ターボトレイン」もある.
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だが,今はもう無く,写真のような列車が走っている(といっても,10年前だが,機関車が変わっているだけで,基本的には今も同じようである).いかつい電気式ディーゼル機関車である.
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後ろに繋がっている客車は,こんな感じだが,マニアの皆様はお気づきだろうか.これ,実は「振り子式」である.そういう目で見ると,車体の裾が絞られていたりすることに気がつくはず.
Ottawa1_10-026Ottawa1_10-025機関車と客車が合ってないように見えるが,そのとーり,合ってない.実は専用の機関車があり,その組合せでは160km/h(=100 mph)で走行でき,曲線もスイスイだったはずなのだが,カナダであるこということが災いした.下の写真が,本来の専用機関車.
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専用機関車がカナダの粒の細かい雪を吸い込み,高速運転できなくなってしまった.ということで,凡庸な汎用旅客機関車が登場.走りもマイルド.トロント-モントリオール間500キロほどを4-5時間ほどかけて走る.曲線では,言われてみれば傾いているかなーという感じだが,そもそも大陸なので,そんなに厳しい曲線はない.
ちなみに,鉄道後進国カナダであるが,世界の産大鉄道車両メーカーになってしまったボンバルディアの本社はカナダである.(鉄道部門はドイツ)

しおかぜ9号松山行き,本日の最終便です(えっ!?)

これを書いているのは9日土曜日.手元にあるのは,岡山駅12:35発のしおかぜ11号の切符.台風接近中.
岡山で乗り継ぐべく,山陽新幹線乗車中に不安になってJR四国のサイトを見ると・・・朝の段階では「12:35発のしおかぜ11号まで運転」とあったのが知らぬ間に「11:34発のしおかぜ9号まで運転」に変わっているではないか.えっ,台風で運休?
今なら間に合う,予定よりも早めののぞみ号に乗れば,岡山駅で4分乗換.隣の親子も4分乗換とか言っている.
そして,・・・何とか間に合った.ただいま,しおかぜ9号松山行き,本日の最終便の中.席が無いので「乗務員室」と書かれたデッキのイスを確保.
紫雲丸事故などをきっかけに瀬戸大橋が本州と四国の間に架けられ,昔に比べれば「海外」感は少なくなったが,こういった異常時には「海外」を実感させられる.橋よりはトンネルの方が(景色はイマイチだが)輸送の安定度は大きいと感じた日であった.
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プレメトロ(どう見ても”ペイ”はしないけど)

日本では地平面を走るLRTの整備ですら「採算ガー」とかいう話になりがちでさっぱり話が進まないが,海外に行くと「採算ガー」と言うような視点では絶対に「ペイ」しないような交通システムが存在していたりする.
学生によくするどんぶり勘定である.
延長5kmのLRT路線を整備したとしよう.30億円/kmの整備費用がかかったとして30×5=150億円.この線路上をLRTが走る.(実際には難しいかもしれないが)金利が3%ほどで建設費を30年で返済したとしよう.そうすると総支払額は2倍あまりの350億円ほどとして,年間の支払いは,350億円÷30年=11.6億円/年.1日あたりにすると,11.6億円÷365日=320万円.朝6時から夜11までの17時間走ったとしよう.そうすると,18.8万円/時間.片道あたりだとその半分で9.4万円/時間/片道.5分毎に走ったとして,毎時12本なので,9.4万円÷12=7800円/列車.1人あたり200円払ったとして7800円÷200円/人=39人.朝から晩まで5分毎にやってくる電車は全て約40人乗っている・・・・全て運賃で賄うって厳しいねぇ.まだ電気代も,人件費も払ってないよぉ.
さて,ベルギーのアントワープ駅の地下にはLRTの発着場があり,地下鉄風だが走ってくるのはLRT用の小さな電車である.プレメトロという.
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和蘭のアムステルダムでも地下鉄かと思いきや,LRT風電車が2編成併結でやってきたりする.
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こういった地下線は,地平に線路を敷くよりも建設費がかなり高く,キロあたり100〜200億円くらいはする.そうすると,上に書いた計算式の数字はそれぞれ5倍くらいになり,おおよそLRT用の電車では運びきれない数字になってしまう.
つまり,こういう地下を走るLRTというのは,日本の「採算ガー」とかいう風土では絶対にあり得ない交通機関なのである.でも,ベルギーやオランダには存在するし,クルマ社会の米国サンフランシスコにもあったと思う.交通機関単体では「採算ガー」採れませんが,都市全体としてはこうした方が適切であるとの判断で導入されている交通機関であるとも言える.
日本の「採算ガー」・・・何とかなりませんかね.それにこだわって失ってるものがいろいろありそうです.

消費税不況(って,前から分かってたよね)

本職の経済学学者に叱られるくらいかなり簡単に書くと,消費税率が上がると,経済活動量が下がるので,A<0

  • (経済活動量)=A×(消費税率)+B ・・・[1]

税収は経済活動量が多くて,消費税率が大きいほど大きくなるので,C>0であり・・・

  • (税収)=C×(経済活動量)×(消費税率) ・・・[2]

両式から(経済活動量)を消去すると・・・

  • (税収)=C×{A×(消費税率)+B}×(消費税率) ・・・[3]

つまり,税収は消費税率の二次関数で,A<0,C>0なので,AC<0,すなわち上に凸(釣り鐘型)である.

  • (税収)=AC×(消費税率)^2+BC×(消費税率) ・・・[4]

あとは高校1年生でもグラフが書ける.どういうことかというと,税収を最大にしたいのなら最適な税率が存在して,それ以上の税率だとかえって税収が下がるというわけである.今回,5%→8%にして,概ね3%税率が上がったが,もしも経済活動量が概ね-3%よりもさらに低迷すると,税収そのものも下がる.そのあたりが今回の増税の評価の目安であるとともに,次の増税の是非の目安である.(詳しくは本職のどなたか,よろしく)
税率を上げて社会構造を変化させたいのか,それとも税収を大きくしたいのか,目的をはっきりさせたほうがよさそう.
#追伸: 年率換算前年同期比経済成長率が-6.8%らしいが,最適税率超えてるのかも.少なくとも,税収は「減収」だよね.これじゃぁ「借金返済」からはかえって遠のいたよね.増税による増収については失敗では? 増収か減収かについて,誰もコメントしないのは何故??

TRANSPORT IN CANADA(これだけ車線があっても渋滞)

トロントは都市圏人口約500万人.概ね大阪府と同程度である.
郊外の高速道路,往復6車線でもダメ.渋滞している.
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往復12車線でも渋滞気味.前方のクルマがブレーキ踏んでいる.
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この差は何かというと,まともな都市鉄道があるかどうか,である.

CANADIAN RAIL(線路の交差点)

鉄道工学の教科書には,新幹線の特徴の一つとして「全線立体交差であり,踏切や平面交差がない」と書かれてあったと思う.こんな光景を見るまでは,”在来線でも平面交差なんかねぇよ”と思っていたが,世の中広いものである.
まちの郊外にあるある.平面交差.場所はこの辺.まだあるようだ.
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複線バージョンもあるぞ.こっちは,この辺
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確かに,これでは200-300km/h運転は怖くて出来ない.(もちろん,上の2箇所とも信号でちゃんとコントロールされているので,出会い頭の事故はないはず.)

北陸新幹線のルートの話(並行在来線の定義って何?)

新幹線を新たに建設しようとすると,しばしば問題になるのが「並行在来線」である.ところが,この並行在来線,定義がイマイチはっきりしないのでどの路線が該当するのか議論になりことが少なくない.
国土交通省のサイトには,こう書いてある.
http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000041.html

  •  並行在来線とは、整備新幹線区間を並行する形で運行する在来線鉄道のことです。  整備新幹線に加えて並行在来線を経営することは営業主体であるJRにとって過重な負担となる場合があるため、沿線全ての道府県及び市町村から同意を得た上で、整備新幹線の開業時に経営分離されることとなっています。

建設する新幹線が,在来線の真横にある場合で,しかも新幹線化されるであろう特急列車がそこをまさに走っている場合には特段異論は出にくい.ところが,在来線と新幹線が離れていたり,新幹線の横に在来線はあるのだが,新幹線化される特急列車がそこを走っていなかったりすると揉め事の原因になる.
上の文章をよく読むと,在来線の経営分離をする理由は「JRにとって過重な負担となる場合がある」である.島の三社はともかく,本州三社は株式を全て民間に放出しているので,今やこのような配慮は過保護じゃないかと個人的には思っているのだが,とにかく理由は「JRにとって過重な負担となる場合がある」である.加えて,公費建設するのに最初から特定の完全民間株式会社に対して経営権を保証しているのにも違和感があるし,新幹線開業後の新幹線の線路のリース料も「受益の範囲内」に設定されて,完全民営会社に利益を確約しているのも違和感がある.
さて,どんな場合に「JRにとって過重な負担となる場合がある」かというと,ほとんどの在来線では特急列車の収益で路線を維持し,その路線上を普通列車や貨物列車を通しているような資金構造になっているので,特急が走らなくなると収益源を失って「JRにとって過重な負担となる場合がある」というわけである.
とすると,並行在来線の定義は上に書いてある「整備新幹線区間を並行する形で運行する在来線鉄道」というよりは, ”新幹線の開業によって特急列車が走らなくなる在来線” と書いた方がより正確である.
例えば北陸新幹線は,敦賀まで工事中,その先はルート案が複数あって確定していないが,どのルートになろうとも終点が大阪である限りかならず発生するのは「湖西線の並行在来線問題」であり,滋賀県は必ずその問題に巻き込まれる.ただし,並行在来線については「経営分離」と書いてあるだけで,在来線の直接の沿線が全てを負担しなければならないとは書いていないことに留意する必要がある.要は,正しく受益者負担を考えるべし,ということである.以外と”忘れている主体”も利益を得ていることがある(しかも確約されてたりして).
#もっともそれ以前にいつも感じるのだが,財政力の弱い地方部での新幹線整備は地元負担がいろいろあり,国土軸付近ではほとんど地元負担がないのは不公平じゃないの,と感じる.

北陸新幹線のルートの話(リニア新幹線との関係編)

北陸新幹線が金沢までできるのは,もうすぐ.その先,福井県下の敦賀までは公式には2025年完成予定で,現在もっと早くできないかといろいろ案が練られている.
ところで,公式開業予定の2025年というと,リニアの名古屋開業予定の2027年とほとんど同じである.北陸新幹線の敦賀開業が前倒しになっても,せいぜい数年なので北陸新幹線はリニアが少なくとも名古屋まで来ていることを前提に計画するのが適当である.(・・・が,そんな議論はあまり聞いたことがないのが残念なところ.)
ほぼ福井限定のお話しであるが,福井から金沢,富山をまわって東京までは約3時間弱ということになっている.
じゃぁ,リニアができるとどうなるだろう.もしも,北陸新幹線が米原に接続されて,北陸新幹線から名古屋まで直通列車が運転されたら,福井から名古屋まで1時間弱,そうすると,東京まではリニア経由で2時間を切る.
北陸新幹線の接続が米原でなくても(いや,敦賀から先が建設されていなくとも),フリーゲージトレイン(GCT)が米原まで運転されて,米原と名古屋の2回乗換を要したとしても2時間ちょっと.3時間近くになることはない.
わかるかな?
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北陸新幹線のルートの話(3案比較編)

北陸新幹線の敦賀から先のルートについて,このルートはどうとかこうとか,関連する鉄道会社の協力が得られるかどうかとか,いろいろな意見がある.建設費と通過するのに必要な時間とかが表になって示されていることもある(・・・その表の「元祖」を探ってゆくと自分のところに戻ってきたりすることもあるのだが・・・).
ところで,意外と忘れているのが沿線人口分布である.沿線人口が多ければ交流人口が多く,北陸新幹線の利用客が多くなって,このプロジェクトが成功しやすい.航空機と違って,終点だけ気にしていればよいというわけではないのが新幹線である.
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簡単に言うと,原案である小浜ルートは敦賀から先にあるのは大阪のみ,湖西線沿いに建設すると言われる湖西ルートは京都と大阪,実質的には北陸・中京新幹線になる米原ルートは京都と大阪と名古屋であり,名古屋の先には40分で東京がある.
北陸新幹線の線路が欲しいのか,それとも,その線路を使って多くの客に使って欲しいのか,どっちが大事か,よーく考えてみよう.
なお,高度経済成長の頃と違って,沿線に人口や産業が純増として張り付くご時世ではないことにも気をつけよう.

CANADIAN RAIL (大きな公園には引込み線)

日本でもかつては各所に引き込み線があり,現在でもその廃線跡を確認できることが少なくない.昔ながらの大きな工場は,臨海部の船が使える場所か,幹線鉄道沿いにあることが多い.
そんで本題だが,カナダの大きな公園に行くと,公園の隅っこにこんな設備があることがある.引き込み線である.
Woodside10-081Woodside10-086Woodside10-082かなり使用頻度が低そうな雰囲気ではあるが,大量の物資をトラックで運び込むよりは自然に優しい感じである.(このまま,自然に帰って行きそうな線路・・・)