相変わらず「都構想」らしいが…

「都」というのは首都のことなので,国土の重要機能を担う都市という意味になる.

現時点では大阪は日本の第二の都市圏の中心都市ではあるものの,残念ながら,行政的な機能としては一地方区分の中心都市以上の役割は割り当てられていない.

大阪市を分割して大阪府の地位を上げたとしても,同じ範囲内での切ったり貼ったりの域を出ないので,日本国内の統治機構的な地位が向上するわけでは無い.国土計画の面でも大阪の地位を向上させて副首都にしましょう…とは,どこにも書かれていない状況である.

この構想を推進していらっしゃる方々が「統治機構改革」とおっしゃっているが,日本の統治機構構造には影響無さそう.

ということなので,国から見れば,大阪府下の政令指定都市が1つ消滅して,小さな「市」相当の自治体がいくつかできるだけの話である.国から見ればこっちの方が御しやすいかも.

最近のニュース等報道での枕詞である「大阪市を廃止して…」に集約されてしまうわけで,大阪市を廃止して分割すると何がいいんだったっけ.

あぁ,話が循環してきた.以下,同じ話が続くことになるので,リンクだけ貼っときますね.

都構想「再挑戦」らしいが…
また「都構想」らしいが…
また「都構想」らしいが…
またまた「都構想」らしいが…


大阪は副首都になれるか(かつての首都機能移転候補地との比較編)
大阪は副首都になれるか(広域ネットワーク編)
大阪は副首都になれるか(都市の位置関係編)
大阪は副首都になれるか(地盤編)
大阪は副首都になれるか(用地確保編)
大阪は副首都になれるか(平常時編)


第1話-新幹線偉大なり編,第2話-産業振興VS交流編,第3話-他の交通網編
第4話-東海道VS中山道編,第5話-新幹線駅が都市圏形成編
第6話-駅アリ>駅ナシ編,第7話-20年差が命取り編,第8話-後手必敗編
第9話-東密西粗編,第10話-リニア編


VOL.5編,VOL.6編,VOL.8編-その1,VOL.8編-その2,VOL.8編-その3
VOL.9編,VOL.10編, VOL.11編, Vol.12+Vol.13編


あれ?住民投票できるんじゃなかったの??
大阪府市統合+道州制=関西総大阪化計画??
毎年2200億円あったらできること
「2200億円」は無かったんや・・・で?
大阪府市統合+道州制=神戸市が州都?
大阪府市統合+道州制=地図に残るは「大阪駅」のみ?
ドーナツの認識方法について

JR東4100億円を追加調達

緊急事態宣言下の移動自粛が6月まで続くとの想定のもと、3月からの調達額は計7750億円にのぼる。

情報源: JR東日本、4100億円を追加調達 乗客急減に対応  :日本経済新聞

JR東日本というと,首都圏の近距離輸送や東日本の新幹線網を運営する巨大鉄道会社で,基本的には優良企業のはずだ.

ところが,その優良鉄道企業が3月以降8000億円近くの資金確保に走っているというのだから尋常では無い.

超黒字企業のはずの東海道新幹線の運営会社も短期資金を1000億円ほど確保しているし,山陽新幹線の運営会社も2000億円近くを確保している.

基本的には交通事業者というのは今日の現ナマ収入を明日の運転資金に回すような(まぁ,そこまで極端では無いが…)経営方法らしいので,コロナによる収入減はそのまま運転資金の枯渇につながりかねないわけだ.

超大手ですらこの状態である.

第二次補正予算に関連する国会の審議(国土交通委員会)を聞いていると,野党がJCOMMの資料などをもとに交通事業者が窮地に陥っている件について言及すると,国交大臣が半ばキレ気味に ”いちいち言われんでも調べている” 的発言を返している.

えーと,既に超大手が運転資金確保に奔走している状態なので,弱小事業者は況んやをやという状態であり,そば屋の出前的に「今やってます」では間に合わないかも.

その方面の業界ではお公家様と呼ばれている理由がわかってきた気がする.

 

【政府与野党協議会】予備費10兆円

地方の特にバス路線やタクシー会社も、バス路線の廃止しないと会社がもたないといったところもある

情報源: 【政府与野党協議会】予備費10兆円は足りていない予算に転用、オリンピック関連予算など不要不急の計上済の予算の見直しを求める – 立憲民主党

(17)移動の自粛により、公共交通機関の経営が極めて厳しい状況にあることに鑑み、需要回復に至るまでの支援策を講ずること。また、事業規模に関わらず、固定資産税や航空機燃料税、着陸料などの減免を行うこと。

新幹線や高速道路のような大型プロジェクトについては与野党で方針が大きく違うことが少なくないが,都市交通や地域交通に関しては比較的方針の差は小さいことが多いと思う.

ようやく具体的な言及が野党側から出てきたが,日本政府さん,どうする?

#与党の先生方は運転手つき自動車なので,電車やバスの現況はあまりご存じ無いかなぁ?
#一部補正予算に反映されたという話があるがよくわからない.基本的には補正予算の組み替え修正動議は否決された模様.

区画整理と輪転機(前編)

輪転機を回して,通貨を発行して,公共事業して,社会インフラを改善しながら経済を回すという方法がある.
(もっとも物理的な輪転機を回すことはほとんど無いらしいが)

だが,ほとんどの場合「財政破綻ガーーー」という話しか出てこないのが残念なところ.そういう脳ミソが凝り固まっちゃった人のために,こういう話はどうかな…

*–*

土地区画整理事業(以下,区画整理)という古典的な都市の再開発事業手法がある.最近は市街地で純然たる区画整理をすることは少なくなっており,大きな建物の建築によって立体的に処理する市街地再開発事業などと組み合わせてみたり,あるいは,ほとんど農地のような地区でこの事業制度を使って住宅地を少ない元手で造成したり,というようなやり方の方が多いと思う.

さて,昨今の区画整理事情はさておき,区画整理の基本的な考え方は…

「公共施設が不十分な区域では、地権者からその権利に応じて少しずつ土地を提供してもらい(減歩)、この土地を道路・公園などの公共用地が増える分に充てる他、その一部を売却し事業資金の一部に充てる事業制度。」

…である.基本的には同じ割合で土地の面積を減らすので,「土地持ち」ほど面積を大きく供出することになる.いわば,資産の大きさに応じて負担するシステムである.

じゃぁ,「土地を取られるだけ損ではないか」という話になるんだが,ちゃんとシステムが回るようになっている.
(それを説明させるのは「都市計画」のテストの定番問題ですね.)

リンク先の国交省の説明では…

「地権者においては、土地区画整理事業後の宅地の面積は従前に比べ小さくなるものの、都市計画道路や公園等の公共施設が整備され、土地の区画が整うことにより、利用価値の高い宅地が得られる。」

…となっており,「資産価値=面積×地価」なので,面積は減るが地価が上がるので,資産価値は変化しないか,上昇する.ということで,「土地を取られるだけ損」にはならないということになる.
(実際には,一部で面積が小さくなって資産価値が下がってしまう場合もあるので,そこらへんは部分的に金銭精算する方法がある.)

減らした面積分は,道路用地に使ってみたり,公共施設用地に使ってみたり,あるいは空いた土地を売り飛ばして事業の費用に充てたりといった具合である.変な形の土地を四角い形にして売買しやすくするなんてこともする.狭い街路が曲がりくねって消防車が入れない…ということもなくなるので安全性も向上だ.

こうやって,事業対象となった地区で素晴らしい地域形成ができれば,住民全員が(資産価値的には)大もうけというシステムである.

これと冒頭の「輪転機」の話がどう繋がるかって?
長くなってきたので,続きは明日後日.

つづく

日本政府さんへ:出かける前は忘れずに

「GO TOキャンペーン」をするらしい.例の旅行券をばらまくという話のことである.

コロナ対策として予備費を10兆円も準備するらしいので,「GO TO…」にいくら,「お肉券」にいくら,「お魚券」にいくら…と積み上げてゆく算段はできているんだろうなぁ.

「GO TO」には,「〜に行く」という意味の他に,「(お金が)〜にまわされる」という意味もあるらしいので,実は旅行キャンペーンであるとともに資金循環キャンペーンでもあるという,ダブルミーニングになっている模様.

さて,「GO TOキャンペーン」は1.7兆円,事務手数料だけで3000億円(つまり計2兆円?)を費やす大型対策の1つだが,その”お出かけ”,ちょっと待った.

かつてジャック・ニクラウスが「出かける時は忘れずに」と,たどたどしい日本語で“米国急行”のカードをPRするCMがあったのを覚えてるだろうか(話が古いって?).今回は「GO TOする前は忘れずに」である.

観光行動を促す以前に,日常生活のための交通事業が危ない状況に陥っており,そっちの方が先だ.観光はもしかしたら「不要不急」の範疇なのかもしれないが日常生活は「必要急行」だ.「Daily EXPRESS」だ.

予備費をあちこちに気前よく蒔けるのなら,GO TOする前は忘れずに「Daily EXPRESS」への利用枠の設定も必要だ.当然,予備費確保するよな?

#急げ,関係各部署.(こういう言い方するのは気が引けるが)東北の震災以来のタイミングだ.東日本大震災の際に予算確保しようともしなかった皆さん,再び時機が来たんだよ.

#今週末もオンライン会議がある模様.
https://www.jcomm.or.jp/covid19/forum/

#ようやく一部の野党が,”地域の交通事業者への支援が必要” とテレビの討論番組で言い始めた模様.

コロナ影響で万葉線乗客が大幅減

高岡、射水市を結ぶ万葉線の乗客数が新型コロナウイルスの影響で3月以降、大幅に減っている。4月は前年同月比で乗客が6割減り、旅客運輸収入は半減。

情報源: 万葉線乗客が大幅減 コロナ影響で3月以降 – 富山県のニュース | 北國新聞社

万葉線に限らず,全国のバスや鉄軌道は同じような状態だと思う.

それでも4月には定期券収入があって現金が手元にあり,他の月に比べて資金に余裕があるが,これが5月,6月,7月… となってくると厳しい状況に陥る可能性高し.

日々電車やバスが動いているので,市民的には「自覚症状」が出にくい社会現象だが,ある日突然その日はやってくる.

#社会的な発言力の大きな「エラい人」に限って,運転手つき自家用車に乗っていることが多そうなので,こういうシビアな事態には気づきにくいと思う.

コロナ、麻生氏「増税に頼らず」景気回復に期待、財政対応で

「増税に頼るのではなく、景気回復によって税収が伸びることを目指す」と述べた。

情報源: コロナ、麻生氏「増税に頼らず」 景気回復に期待、財政対応で:東京新聞 TOKYO Web

 

そのとーり

でも,もうリップサービスはいいです.限られた時間内に具現化できるかどうかが重要.

結果重視.でも,まだ結果ナシ.

日本政府さん公共交通支援額をうっかり2桁間違えてしまう

第二次補正予算の公共交通支援の内訳の情報によると,先日の分析通り,メインの支援は政策金融公庫や持続化給付金,雇用調整助成金他で借りるなりしてくれということのようで,やはり例のクーポン券の束のようなのが支援メニューのようである.

それよりも驚いたのが,3枚目の右上の金額である.

「140億円程度」

えっ?! 2桁金額間違えてませんか?

クーポン券の項目だとそんなもんになるのかもしれないが,通勤通学需要の減退,出張需要の消滅,インバウンドの消滅,書き入れ時期の観光需要の消滅で,公共交通事業はかなり痛手を受けてるはず.(そして,当面それは続く.)

140億円? ご冗談でしょう.自動車社会の米国ですら2.7兆円ですよ.

1枚目の「基本的な考え方」のところにちゃんと書いてるじゃぁないですか.

    1. 緊急事態宣言下も含め,感染拡大防止策を講じながらサービス提供が継続されることが必要.
    2. 需要減に伴う減収から財務面での事業存立基盤が揺らいでいる事業者について,事態収束後にサービスの提供が困難となる事態を回避することが必要.
    3. 事態収束後は,十分な感染拡大防止策を講じつつ,ビジネスモデル面も含めた円滑な移行に向け準備することが必要.

140億円でこれが実現できる? ご冗談でしょう.

一般的な商売なら,借金してでも良好な事業をすれば事業の成長があって,借りた金以上のもうけが出るかもしれないが,日常生活を支える交通事業の場合は,事業が軌道に乗ってもせいぜいトントンレベルで,借金返せるほど儲かるわけじゃないんですよ.

世の中の交通事業者が巨大鉄道事業者ばかりじゃないですからねぇ.日本政府さん.

#なお,物販や不動産業で企業グループ全体を支えている交通事業者も多いと思うが,物販→Eコマース,オフィス需要→テレワーク…により,今後もじりじりと収益源を失い続ける可能性アリ.

 

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その11-まとめ)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

まとめておこう…と言ったきり数日経ってしまったが,まぁ,例のテレ授業,皆さんが思っているより準備に手間がかかる.お金持ち大学なら「無観客授業」をするだけで,事務職員がビデオ収録して,後はよしなにしてくれるらしいが,そういう境遇ではないので,毎日毎日,授業内容のオンラインコンテンツ化作業である.何だかんだで1コマに1-2日かかるので,平日はほとんど潰れてゆく…

さて,「JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?」のまとめである.キーポイントはJRではなくて,地下鉄中央線だ.船もヘリコプターも,客数をさばく点では全く当てにならないだろう.場所が場所だけに,徒歩も無理だ.

(1) 地下鉄中央線は今のままで何もしない場合…

 バスを数百台かき集めてピストン輸送.途中の渋滞は心配だが,そこよりもバスターミナルに平均6-7秒ごとに到着するバスをちぎっては投げ,ちぎっては投げ,という作業が必要.①バスをかき集められるか,②超高性能バスターミナルを整備できるか,これらが成否を握る.失敗すると客がバス停や地下鉄駅にあふれ,悪評待ったなし.

(2) JRが桜島まで新大阪や環状線各駅からの輸送に参戦した場合…

 JRの客は,結局のところ桜島から会場まではバス客に変身するので,やはりバスだ.JRで輸送する距離の分,バスの走行距離は減るので,バスをかき集める場合の必要台数は減るかもしれない.だが,キーはバスだ.
(1)と同じく,①バスをかき集められるか,②超高性能バスターミナルを整備できるか,これらが成否を握る.桜島-会場間のバスは連節バスを導入して単位輸送力を上げるという方法もあるが,結局はこれもバスだ.

(3) パークアンドライド駐車場を整備した場合…

 駐車場まできた客は,やはりそこから会場まではバス客に変身するので,やはりキーはバスだ.駐車場を変なところに整備すると,昔の「USJ渋滞」の再来になるぞ.(1)(2)と同じく,①バスをかき集められるか,②超高性能バスターミナルを整備できるか,だ.

(4) 地下鉄中央線を2分30秒運転にした場合…

 ちょっとバスへの依存は下がるが,まだバスは7-8秒ごとにやってくる.(1)(2)(3)と基本的には同じだ.

(5) 地下鉄中央線を2分30秒運転 & 増結8両化 & 180%まで詰め込み

 ここまでできれば,バスが会場のバスターミナルに到着するのは17秒毎で,何とか現実的なバスターミナルの能力で済みそうだ.基本的な輸送能力は「JR+バス」と「地下鉄中央線」でほぼ賄えるので,バス輸送はP&R駐車場輸送や遠方からの観光バスなどに割り当てても大丈夫そうだ.
増結には近鉄けいはんな線のホーム延伸は必要そうだが,準備工事が終わってそうなので,大規模な土木工事は不要そうだ.増結についても,高齢車両の入れ替えに合わせれば思ったほど費用はかからないかもしれない.あとは電力供給用の変電所の増強か.

結論.
① JRの参戦はバスの輸送距離の短縮には役立ちそうだが,救世主にはなりそうもない.
② 地下鉄に対してちゃんとインフラ投資をすれば,観客輸送問題はほぼ解消しそう.
③ インフラ投資をケチると観客輸送で苦労し,失敗すると悪評が立ちそう.


JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その10)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

車両の話の続きである.メトロの車両の話.

現状6両×18編成,万博中8両×32編成,万博後6両×21編成で考えてみる.

現状では,1984−1989年製造の旧20系が7編成,1991-1995年製造の24系が11編成である.前者が2025年で36年,後者が30年なので,この際,万博後には全部新しくなるように考えてみる.

形式 製造 編成
旧20 1984-1989 7 Tc M T M M Tc
24 1991-1995 11 Tc M T M M Tc

 

万博時には,旧20系を3編成戦線離脱させ,ここから中間車両2両×4編成分を抜き出して8両編成化に使う.同じく,24系を4編成戦線離脱させ,ここから中間車両2両×7編成分を抜き出して8両編成化に使う.まっさらな8両編成のM25系(ということにしておく)を21編成製造して実戦配備して万博輸送.

形式 製造 編成
旧20 1984-1989 4 Tc M T M T M M Tc
24 1991-1995 7 Tc M T M T M M Tc
M25 2025 21 Tc M T M T M M Tc

 

万博後は,古い20系も24系もご引退いただき,新造車のみに.中間車両2両を抜いて6両にする.

形式 製造 編成
M25 2025 21 Tc M T M M Tc

旧20系や24系は大阪メトロの他路線にもたくさんあるので,万博終了後に余ったM25系中間車両2両×21に中間車両や先頭車両をさらに新造して新たな編成を作り出し,古い旧20系や24系は「さようなら」.

じゃぁ,まとめてみよう.(つづく