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単線特殊自動閉塞

単線区間では,線路が1本しか無いというだけで無く,場所によっては保安装置が簡易なこともある.

理想は複線区間と同じような装置で,進行方向と逆方向用の信号機はすべて赤,進行方向の信号機は複線の片側と同様の働きをする,というものであり,実際にこういった区間はある.

簡易なシステムはいくつかある.例えば下の例では信号機が2つ写っており,あぁ,赤信号の1つ手前の信号だから黄色なのか,と考えてしまうが,本当の信号機は奧の赤信号だけで,手前の信号は奧の赤信号に単純に連動しているだけである.

つまり,もしも黄色信号の横を電車が通りかかってもこの黄色信号は変化せず,黄色のまま.あくまで信号は奧の赤信号だけである.

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列車がいるかどうかは,通常はレールに電流を流しておいて,車輪が左右のレールを短絡することで電気が流れて列車を感知するが,この写真のような区間では駅の付近に短い検知区間があるだけで,あとは列車の存在を直接検知できない.

駅を出発したことを検知したら,その先の区間には列車があるはず.次の駅に到着したことを検知したら,その手前の区間の列車はいなくなったはず.というものである.

列車の発着だけなら,赤外線のリモコンのようなものでも良かろう,ということで,実際にそういったさらに簡易な列車検知システムも存在する.

最近はそういう例は無いが,走行途中に列車が分離してしまって,しかも先頭の機関車がそれを知らずに次の駅まで走ってしまい,さらに,それを知らずに反対向きの列車が走るなどということがあると衝突事故になる.

あるいは区間の途中で予期せぬ列車が入ってくると,列車の存在を知らずに反対向きの列車が走ってしまい,衝突になる,というのもある.信楽高原鉄道の事故は,これに近いものだったっけ.

毎日新聞社説の精度(リニア新幹線公費の投入は話が違う…の件)

この話.

 JR東海が建設中のリニア中央新幹線に、国の資金が投入される方向だ。政府は近くまとめる大規模経済対策の柱にリニア支援を据える。  国が財投債と呼ばれる国債を発行して約3兆円調達し、それを長期、固定の超低金利でJR東海に回す。同社の負担が軽くなる結果、借金の残高が一定以下に減るまで待つ予定だった名古屋−大阪の着工を早められ、完成を現在の2045年から最大8年前倒しできるという。

情報源: 社説:リニア新幹線 公費の投入は話が違う

中央新幹線計画は国策の全幹法ベースの基本計画線であり,それに乗っかってリニア新幹線計画が国の審議を経たわけだ.JR東海自身も勘違いしているようだが,国策にがっつり載っかったプロジェクトなので,そもそも論として「手も口も出すな」は無理がある.

計画内容の審議は通常の鉄道計画(鉄道事業法ベースの私的事業)とは異なり,全国新幹線鉄道整備法という国策に従って審議されたわけであり,国益に資するかどうかが主要な視点なわけだ.今回の3兆円貸し付けは,このまま民間に任せているだけでは国益を損なうとの政策判断がされたわけだ.

「整備新幹線のような公的資金による国家プロジェクトの位置づけであったら、JR東海単独の事業として認められただろうか。」と書いてあるが(…この文章,国家プロジェクトならJR東海の事業じゃ無いだろ,新聞屋の文章として恥ずかしくないのかなという基本的な指摘はさておき),東京大阪間の鉄道なので,通常タイプの新幹線としても事業は有望なレベル(おそらく整備5線よりも有望なレベル)であり,もしも通常型新幹線なら,整備新幹線の建設費の相場のキロ70億円程度で計算すると,全線約500kmで3〜4兆円程度になる.つまり,この程度の公費負担は不思議な額ではない.

そういう点では3兆円というのは妥当な規模の資金投入だ.

なお,新聞社は勘違い(世論のミスリードを狙った表現?)しているようだが,この3兆円投入は「公費投入」ではなくて「公費の貸し付け」であり,(超低金利ではあるが)返済を要するものである.

それから,「南アルプスを貫く総延長約25キロのトンネル工事など、経験のない難航が予想される。」と書いてあるが,21世紀の現在では,想像を絶するレベルの長さのトンネルというわけではない.社説を書いた人の頭にはシンプロントンネルが浮かんだのかもしれないが,それは20世紀初頭の産物だ.

この25kmトンネルの土被りは1400mらしいが,土被り2000m級のトンネルがスイスで先日開通してるので,この工事ができないなら日本のゼネコンは今後は海外で受注できなくなる可能性があり,必死で貫通させるだろう.

あと「過去の公共事業でみられたように工期が長引き費用が膨張する恐れもある。追加支援を求められ国の負担が増加したり、予定通りに返済されずに国民負担が発生したりする可能性はないのか。」だが,そうなったらJR東海は日本航空と同じ運命をたどることになる可能性があり,JR社は必死になって回避するだろう.その点が通常の公共事業の工事と大きく異なる点である.民間主導の公共事業については何通りか方法があるので,記事を書く前に勉強しましょうね.当然知ってるよね?

 

リニア「国家プロジェクト」化のテキトーな批判記事

この記事で気になる部分(元記事参照)が…

安倍晋三首相が打ち出した経済対策では、リニア新幹線に財政投融資資金を投入し、東京─大阪間の開業を8年前倒しする構想が盛り込まれた。未来投資の看板として「国家プロジェクト」化が鮮明になったが、採算性や経済効果などで先行きを危ぶむ声もある。大阪圏の政財界による活発なロビー活動が政府を動かしたとの指摘もあるリニア計画浮上の過

情報源: リニア新幹線「国家プロジェクト」化、採算や経済効果危ぶむ声も

採算については,当の事業主が ”いまいち” 的な発言をポロッと言っていたかと思うので,あんまり良くないでしょう.「国家プロジェクト」化によらず,ですね.

それから,ターミナル駅がイマイチなので,列車の速さの割には経済効果についても, ”いまいち” かもしれませんね.東京—大阪1時間で爆発的経済効果があるなら,すでに航空機でその程度の時間で結ばれているので,既に爆発的な経済効果が発生しているはず…なんだがねぇ.これも「国家プロジェクト」化とは関係ない話ですね.記事書いていて,因果関係変だと思わないのかな?

さて,気になったのはその部分ではなくて,1ページ目のこの部分.

「政府の支援なんかいらない。金を出せば政治は必ず口も出してくる。もうこりごりだ。自己資金での計画ができているのだから、(JR東海の柘植康英社長は)財投活用にノーと言ってほしい」――。リニア中央新幹線のプロジェクトに関わったことのある東海旅客鉄道(JR東海)幹部の1人は、吐き捨てるように言った。

例え3兆円の融資を受けなくても,がっつり国策の「中央新幹線」に載っかってるのに,何を言ってるんだろう.鉄道事業法に基づいて,自由に路線を引いて,特認の書類を山ほど作れば国の新幹線の審議会を経由せずとも作れたんじゃないかな.国策に載っけるために,わざわざ全幹法まで書き換えてもらったのに,何言ってんだか.税金対策のために法律も作ってもらってなかったっけ?

そもそも,この会社,営業範囲が他社に比べて変わっているのは国家の意思が働いてのことなんだが,何を言ってるんだか.技術も「日本国有鉄道」由来だし,何言ってんだか.JR他社に比べて営業的に有利な部分だけで営業できるような会社になっているのに,何言ってんだか.

カネ出せるなら何してもいいと思っている時点で,自社の社会的役割を理解していないということでしょうな,この幹部の方は.

さらに同じく1ページ目.

大阪延伸の工事を8年も前倒し着工することは、人手や工期などに相当の負担が発生するリスクがあるという。

いやいや,全部社員でしなくてもいいんですよ.大規模工事したことのないJR東海よりももっと鉄道建設のノウハウをたくさん持った集団もありますから.それから,名古屋以西はアルプスのような難工事区間はありませんので,名古屋開業後10年で大阪開業というのは,工期がほとんど重ならないでしょうから,「相当な負担」は無いですよ.

2ページ目以降にもいくつかツッコミどころがある記事だね,これ.

テキトーに批判記事書いてますね.

 

輪っかを観察

フランスのミュールーズのLRTの電停の…輪っかの話である.

よくよく観察すると,やはり架線柱の機能はあるようである.

さて,この輪っか,面ごとに違う色が塗られており,こっちから見ると,緑色.

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反対側から見ると,水色.

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ちっとした工夫で,ずいぶん印象が変わる.

日本の路面電車でも,すぐにできそうだけど,やらないだろうなぁ.

 

実用オブジェ

日本の交通施設は質実剛健.コスト重視?

味も素っ気もないものが多い.

海外でLRTが導入されるとき,都市デザインが考慮されている,と紹介されることが多いが,例えばここミュールーズでは架線柱が輪っかである.あっ,いや訂正.

この輪っかは架線柱の機能は無いかも.

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日本だと,いろいろ理由が付けられてリジェクトされてしまう案だよね.

LRTでなくとも,日々使うものにはもっとエレガントさがあってもいいと思うんだが,どうかな.そこら辺が豊かさの実感にもつながると思うんだが.

続・寄ってる?

先日の「寄ってる?」の続きである.

パンタグラフが片側に寄っているチューリヒの電車が地下線を走るとこんな感じ.

天井の剛体架線のうち,壁側の方で偏ったパンタグラフが集電している.(暗部を確認するために色がおかしいのはご容赦を.)

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後ろ側にまわると,こんな感じ.

剛体架線が壁側と中央の2つ準備されている.

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中央と壁側とで,供給する電気の種類を変えることが可能なようである.

 

なお,元画像はこちら.

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リニア平城山駅?

リニア新幹線の「奈良市付近」の駅の位置については諸説あり,北は京田辺,城陽,祝園,生駒市高山,高の原,JR奈良,金魚で有名な大和郡山,そして南は天理.

地質調査をしていたという噂話から,奈良市内ならJR平城山駅付近という話もあるようで,確かにこの辺は東西方向に市街化されていない地区が広がる.丘陵地なので,地震に対してもやや有利である.

都市計画上の土地利用の方針である用途地域を見てみると,何とここは用途地域の指定対象外のようであり,風致地区(自然保護地区のようなもの)だ.しかも大半が第一種.高さ8mまでのようなので,高架橋は無理じゃないかな.切り土盛り土は2mまで.

さらによく見ると,この付近は古墳だらけである.古墳に印を付けてみると,こんな感じで,この東西方向に広がる緑のベルトの南半分は古墳を避けて線路や道路を敷くのは困難そうである.

平城山

北半分は古墳こそ無いようだが,奈良なので,単に現時点で古墳等の重要な文化財が発見されていないだけかもしれない.神社の裏山を調べてみると実は…だった,とか.

風致地区の件はクリアしたとしても,工事を始めると「歴史的発見」がいろいろとあるかも.(工事計画としては,「チャレンジャー」かも.)

寄ってる?

チューリヒ市内の電車である.さて,どこか普通ではない箇所があるけど,わかるかな?

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こっちは,分かりやすい.

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電車の上にある架線が片方にナゼか寄っている.

電源電圧の異なる路線と線路を共用する場合,架線の位置によって供給電圧を変えることができるらしい.

日本だと,架線の電圧そのものを切り替えてしまいそうだが,こういう対応方法もあるようだ.

 

レールのクリップ留めinドイツ

レールのクリップ留めというと,昨今のパンドロールあたりを思い浮かべるが,中にはこんな変わったクリップ留めもある.

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木製のマクラギに,特殊な金具を打ち込んで,その金具の一部を曲げてクリップ代わりにしてレールを固定しているのかな?

使用箇所はこんなところ.

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行き止まり式の駅の線路.必ず低速運転するので,こういった簡易なタイプでも問題ない,ということだろうな.

(ドイツ シュツットガルト中央駅)

ミュンヘンのトランジットモール

たまには動画でも見てみよう.今回は有名なミュンヘンのトランジットモール区間.

トラムと歩行者の混合交通だが,わざわざ軌道の上を歩いている人は少ないということに気がつくだろうか.

トランジットモールの軌道部分≠歩道ということ.なかなかこれが日本では理解されていないように思う.

みんな最短距離で横切るだけだね.