国土計画」タグアーカイブ

見直される貨物列車

国交省によると、18年4月の貨物自動車運転手の有効求人倍率は2・68倍で、平均の1・35倍を大きく上回る。ドライバーが確保できないことから、鉄道や船舶の輸送へシフトしているという。

情報源: 神戸新聞NEXT|神戸|見直される貨物列車 背景に環境配慮、ドライバー不足 かつては不要論も

…とは言え,貨物列車が走る在来線のインフラはあまり設備投資がされていないのが実態であり,リンク先のような非常時における輸送ルートを確保するにはいくつかの懸案事項がある.

  1. 貨物列車を運行するために必要なレベルの在来線設備は,必ずしも旅客運行に必要なわけではない.ということで,その設備維持の差額分を公費で補填するなどする必要がある
  2. 単線区間の交換設備や複線区間でも待避設備を設けておかないと,足の遅い貨物列車を運行しにくかったり,列車遅延時の対応がしにくい.旅客主体の鉄道会社に任せておくと,固定資産がかかるのですぐ撤去してしまう.税金の部分を含めて,維持費を公費で補填するなどする必要がある.
  3. 日本海縦貫線や山陰線などでは,単線,急曲線,勾配などの難所があったりするが,放置しても改善される見込みはない.かといって,貨物会社が改良できる力も無い.ということで,公費による路線改良は必要.これにより輸送力アップと輸送の信頼性(遅延耐性,悪天候耐性など)が向上.
    • 我が国の在来線改良メニューはかなりしょぼいが,難所区間をバイパスするようなトンネルを青函トンネル方式(スーパー特急方式)で(法的には新幹線の部分整備として)建設するという方法はある.
    • この方法なら,全線着工の難しい日本海側での新幹線整備に部分着手できるとともに,貨物列車の輸送力向上,既存の在来線特急の160km/h程度までのスピードアップが実現できる.
  4. 青函トンネルや関門鉄道トンネルが結構老朽化しているので,堀直し必要かも.
  5. 非電化区間と電化区間を直通運転できるような機関車の開発(英国Class 800の機関車版)と運用.電化路線間に短い非電化区間を挟んで運行するようなケースや短い非電化の支線に乗り入れることを想定.
  6. 特急貨物電車の交直流対応版の開発(俊足化).
  7. 貨物列車へのLoad,Unloadの拠点の性能upが必要.末端部分はトラックへの依存が続くので,異なるモード間の接続を容易にするとともに,倉庫機能も必要かも.インターチェンジ付近に最近増えているEC物流倉庫の鉄道版?
  8. 在来線による貨物輸送の速度には限界があるので,(重量物は難しいが)軽量で高速性を要求されるようなものは新幹線インフラを使った輸送も必要.

…といった辺りか?

いずれも,放っておいても自由経済メカニズムが解決してくれるようなものではないので,政府の主導的な政策実施が必要ですね.

米巨額インフラ意欲_新型コロナ追加策216兆円

トランプ米大統領は31日のツイッターで、2兆ドル(約216兆円)に上る「極めて大規模で大胆な」インフラ整備に意欲を示した。

情報源: 巨額インフラ整備に意欲 新型コロナ追加策で216兆円―米大統領:時事ドットコム

米国といえば100年近く前の世界恐慌後に,「ニューディール政策」を実施して経済活性化をはかったことで有名.中高生用の社会科の教科書にも出てくるレベルの話.

「ニューディール政策」には大規模インフラ整備が含まれていたが,今回もほぼ同様の政策を打ち出してきているわけで,現況は世界恐慌レベルの状況だという認識であることが読み取れる.まさに教科書通りの対応をしてきている.

いっぽう,東洋の某国は初動の貧困救済レベルで資金の出し惜しみをしている模様.まさに「Too Little, Too Late」.現政権は国民の生命と財産を守れるか?

パンデミック長期戦への準備^2(不特定多数って何?)

年度末なので,行政の会議が多い.打ち合わせなどしていると,世間話として出てくるのが新型コロナへの対応である.

そこで表面化したのだが,「不特定多数」の解釈が行政担当者と私とで違っていたことだ.

私の解釈では,家族や職場などの日常的な集団があり,ウイルスを広めないために各人が属する日常集団間に感染の新たなリンクを作らないことが重要なので,日常的な集団ではないことが不特定多数の条件だと思っていた.

ところが,世間話をしていると彼らは「不特定多数」とは住所や名前を知らなくて,感染が発覚した場合に感染経路を追跡できない場合を不特定多数と認識しているようであった.

行政の会議では,出席者がどこの誰か全てわかっているので,不特定多数ではない,との認識の模様.何かあったら,追跡可能.なので,行政の会議は不特定多数の集会ではない,と.

うーん,どうなんだろ.

不特定多数って何?

パンデミック長期戦への準備

一応,新型肺炎の蔓延については「世界各国に比べて」ではあるが国内の拡大がマイルドで,”一応” under controlのようである.もっとも,気がついていないだけで,感染している人もいるかも.

under contorolということは…免疫を持っていない人が大半であるという状況でもあり,パンデミック以前と変わらないわけで,この流行病を克服できたわけではない.毎日学校を休んで…ということを続けるわけにもいかないので,この先何年も何十年もちびちび誰かが感染しているという状態を想定した体制に移行する必要があるのは確かだ.

祝日で家にいるのでテレビを見ていたら,藤井先生が「病死者と(経済が苦しいことによる)自殺者の合計が最小となるように…」と言ってたので,どの程度にコントロールするのがいいのか,(哲学者に怒られそうだが)「超」概算してみた.

我が国の年間自殺者数は,2003年の3万4千人台がピークで,過去を明治まで遡ってもこれが最大のようである.2019年は2万人を割り込んだようである.ということで,自殺者数は2-3万人台という数字の大きさのレベルを頭に入れておく.

新型コロナの致死率については諸説あるが,50代までは1%程度まで,高齢者ほど致死率が上がり,80歳以上では15%ほどにもなる.ということで,リンク先を参考に,若年層は0.2%,生産年齢人口は50代60代も含むので0.4%,65歳以上の高齢者は8%と設定してみる.

2020年時点の推計人口は,15歳未満の若年層は1515万人,生産年齢人口は7488万人,高齢者は3598万人である.

ということで,年齢によらず,感染率0.1%にコントロールすると死者数は3000人ほど.中国イタリア並み.このレベルで経済苦の自殺が数千名程度防げるのなら,コントロールする目安としてはアリなのか?

人口(万人) 感染率(%) 致死率(%) 死者(人)
若年層 1,515 0.1 0.2 30
生産年齢 7,488 0.1 0.4 200
高齢者 3,598 0.1 8.0 2,878
合計 12,601 3,208

 

感染率1%にコントロールすると…年間自殺者と同程度の死者数.このレベルで経済苦の自殺が(これまでの年間自殺者と同程度として)なくなるのなら(?),感染率1%以下が上限ラインか?

人口(万人) 感染率(%) 致死率(%) 死者(人)
若年層 1,515 1.0 0.2 303
生産年齢 7,488 1.0 0.4 2,995
高齢者 3,598 1.0 8.0 28,784
合計 12,601 32,082

 

感染率を5%にコントロールすると死者数は16万人になり,年間自殺者の5倍ほどになってしまった.過去の自殺者数の推移から考えても,経済苦だからといって5倍になるとは考えにくいので,感染率5%目標とすると総死者数は増えてしまいそう.

人口(万人) 感染率(%) 致死率(%) 死者(人)
若年層 1,515 5.0 0.2 1,515
生産年齢 7,488 5.0 0.4 14,976
高齢者 3,598 5.0 8.0 143,920
合計 12,601 160,411

 

さらに感染率を10%にコントロールすると死者数は32万人になり,年間自殺者の10倍ほどになった.

人口(万人) 感染率(%) 致死率(%) 死者(人)
若年層 1,515 10 0.2 3,030
生産年齢 7,488 10 0.4 29.952
高齢者 3,598 10 8.0 287,840
合計 12,601 320,822

 

感染率をスペイン風邪と同程度の30%にコントロールすると死者数は96万人になり,年間自殺者の30倍ほどになった.

人口(万人) 感染率(%) 致死率(%) 死者(人)
若年層 1,515 30 0.2 9.090
生産年齢 7,488 30 0.4 89,856
高齢者 3,598 30 8.0 863,520
合計 12,601 962,466

 

ドイツでは放っておくと感染率が70-80%になるのではないかと危惧しているらしいが,感染率が70%なら死者数は225万人になり,年間自殺者どころか本格的な戦争並みになった.

人口(万人) 感染率(%) 致死率(%) 死者(人)
若年層 1,515 70 0.2 21,210
生産年齢 7,488 70 0.4 209,664
高齢者 3,598 70 8.0 2,014,880
合計 12,601 2,245,754

 

ということで,年間自殺者数のオーダーや過去の推移から考えて感染率1%あたりが許容範囲上限? 感染率5%だと死者総数が大幅に増える可能性があり,感染率10%だと結構厳しい状況になり,何もせず放置だとやはり戦争級の人的被害が出そう.

感染率1%というのは,全国12600万人に対して126万人,大阪府883万人に対して9万人である.

ただ,9万人の感染者が大阪府下で発生したとして,感染者の6.7%が重症者だったとすると,6000床必要になり,病院のキャパを上回りそう(2月末段階では全国で数千床レベル,大阪府下では指定医療機関の病床は約80床という話もある模様).上回ると放置になるので,死者数等激増しそう.

軽症者は自宅療養か一般病院に入院し,指定機関は重症者だけとする条件でキャパから逆算すると,大阪府下では軽症者を含めた感染者数は1170人まで,感染率は0.013%までが対応可能範囲で,1%どころか感染率0.1%でも対応が厳しそう.

キャパを上回れば致死率がイタリアのように急上昇する可能性があるので,結局のところ重症者数が準備できる病床数以下になるようにコントロールするという現行の方針に落ち着きそう.

何言ってんだコイツ,と思った人が多そうな本日の府知事の発言であるが,その発言内容が実現できるかどうかはともかく,再来週には感染者数3000人余り,重篤者200人以上でキャパオーバーするかもと言われると,何も行動しないわけにはいかなかったということだろう.

移動の制限以外に感染拡大を効果的に防止する方法があるかどうか,ちゅうことやな.

(…今回鉄分無し)

※潜伏期間が1週間とか2週間のようなので,今から呼びかけても間に合わないかも.

全幹法改正のポイント(建設指示〜土地立入編)

つづいて建設線の建設の指示である.現行法の全文そのものはこちら

第8条(建設線の建設の指示),第9条(工事実施計画),第10条(行為制限区域の指定及びその解除),第11条(行為の制限),第12条(他人の土地の立入り又は一時使用),このへんの内容は,現行法のままでも差し支えないかなぁ.

あえて言うと,第9条で登場する「営業主体」については,第6条とか第7条の変更に対応させることかな.

(つづく)

全幹法改正のポイント(営業主体及び建設主体の指名編)

つづいて営業主体及び建設主体の指名編である.現行法の全文そのものはこちら

現行法ではこうなっているが,やはり問題がある.結構アンタッチャブルな話題である.

「第六条 国土交通大臣は、建設線について、その営業を行う法人(以下「営業主体」という。)及びその建設を行う法人(以下「建設主体」という。)を指名することができる。」

一見何の問題もなさそうだが,日本国有鉄道から民営化された直後の旅客鉄道各社だったころは,国鉄時代の名残で各整備計画線の営業主体はどこがするのか,(どの法令にも書かれていないが)半ば「予約」されていた.

ところが四国と北海道と貨物を除いて各旅客会社の株式が民間に放出され,法制上は南海や東急や阪急や京成等々の鉄道会社と全く同じ扱いになっているにもかかわらず,なぜか国は旅客鉄道会社の営業権を気にしており,今後建設される新幹線の営業主体は当然○○本線を営業している鉄道会社が引き継ぐかのような雰囲気になっている.

新幹線は公設民営になっているので,税金で建設されたインフラの使用権は,入札であってしかるべきなのに,なぜか誰も何も言わない状態である.まぁ,入札を実施しても応札者がたくさん現れるとも思えないが,形式すらそうしようとしていない.プロセス不明なまま,大臣が営業主体を指名してしまうわけである.

当面は問題は無いと思うが,欧州と完全な経済の自由化が行われたとすると,あちらは幹線鉄道であっても上下分離されて,「上」については自由に参入できるのが原則である.日本の旧来の慣行のままだと,いずれ「税金で建設されたインフラを特定の事業者に使わせている.EUにも高速列車の運営会社があるので,技術基準を公開した上で参入させろ」というクレームが来るのは時間の問題かもしれない.

それどころか,すでに各旅客会社が国から買い取った新幹線インフラですら「独占的営業を認めているのは問題である.インフラ企業と運営会社を上下分離して,上については新規参入を認めるべきである」と言われても不思議では無い.

…そんなことは無いよ,と言われそうだが,NTTも,電力も,ガスも,既にそうなっている.幹線鉄道だけが特別だと考えるのは正常性バイアスがかかっているからかもしれない.

「2 前項の規定による営業主体及び建設主体の指名……」
「3 第一項の規定による建設主体の指名は、……」

このあたりまでは,現行の条文そのままでもOKだが,第四条はこういう風になるかな.

「4 国土交通大臣は、第一項の規定により営業主体の指名をしようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、指名競争入札を行って営業主体を選定しなければならない。」

現在は,在来線の営業主体にお伺いを立てることが前提になっているが,第5条はこういう風になるかな.

「5 国土交通大臣は、第一項の規定により建設主体の指名をしようとするときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより、指名しようとする法人(機構を除く。)及び指名しようとする法人以外の同項の規定による営業主体として応札しようとしている法人と協議し、それぞれの意見を得なければならない。」

第6条はそのままかな.

「6 第一項の規定により営業主体又は建設主体として指名しようとする法人は、その営業又は建設を自ら適確に遂行するに足る能力を有すると認められるものでなければならない。

(つづく)

京都民報webの精度(京都の大深度地下編)

京都市内を縦断する北陸新幹線延伸計画が京都市長選の争点に浮上しています。地下水を利用している、酒造会社からは同計画に不安の声が広がっています。

情報源: 「”掘ってみないと分からない”は無責任」「名水枯れたら世界の恥や」 北陸新幹線延伸計画で酒造関係者が地下水影響に不安/大深度地下通過を想定 | 京都民報Web

相変わらずスタンスが一定なのは評価するが…すでに京都の地下には地下鉄が東西南北に走ってたり,結構大きな下水道が埋まってたり,巨大な共同溝が埋まってたりしているのは知らないんだろうなぁ.(意図的に無視して煽ってるのかも)

トンネルを掘ると地下水が涸れることがあるのは山岳トンネルの場合で,地下水があると工事がしにくいので,山に含まれる地下水をトンネルから排出してしまうことが主な原因.その量が琵琶湖に匹敵するといわれる京都水盆の水を抜くには,一体何万台のポンプで地上に水をくみ上げる必要があるのやら.水は自然と地上には流れないので.

#ところで,伏見の酒蔵の水源地帯を通過する部分は,大深度地下じゃなくて高架じゃないの? 水源地帯の水は稲荷山付近から流れてきているという研究があったと思うので,井戸の西側は基本的に関係ないと思うが.稲荷山には高速道路のトンネルもあるけど,水が涸れたという話も無いし.

なお,地下工事の場合は水を抜いてから工事をするという方法は使えないので,別の方法を使います.

明治時代の「琵琶湖疎水をつくったら琵琶湖の水で京都市内が大洪水になる〜」と大騒ぎしたのと同じ発想かも.

それから,最後の方に「なんぼかかるかも分からへん北陸新幹線や環状線をつくるという人に財政再建ができるわけがない」みたいなこと書いてますが,新幹線の財源の大半が税金だと思ってるのなら不勉強.ちゃんと財源構成知ってるのならミスリード.

相変わらず市販の週刊誌レベルやね.(……あ,週刊誌だった)

 

またまた「都構想」らしいが…

だんだん話が小さくなって,ついに大阪市を分割する話しか聞こえてこなくなったけど,分割すると何がいいんだったっけ.

適正規模の都市の方が行政コストが下がるとかいう話が背景にあったんではないかと思う.大抵その手の話に登場するようなモデル式には大幅な誤差があるのが常で,規模とコストの関係を表すグラフの線は(大幅な誤差を伴っているので)実は細い線じゃなくて極太の帯のような状態が真実だったりする.ということなので,大幅にコストが低下するならともかく,微妙なレベルしか変わらないのなら効果が怪しいことが多いんだけどなぁ…

#「都市圏全体のサイズが数十万人程度だと行政コストが小さい」という話を「大都市の行政区画を小割すれば行政コストが下がる」と勘違いしている可能性大.因果関係わかってないのかも.
大都市は分割してもコンパクトシティーにはなりません.やっぱりバックで吹き込んでいるブレインを変えた方が良いと思うんだが…誰?

#あらあらあら…,お金の問題じゃ無いとか言い始めたぞぉ.

それから,名前を「大阪府」から「大阪都」にしたいらしいが,名前を「都」にしても国土における役割が同じなら何も変わらないけどなぁ.各種の書類の変更に費用がかかるばかりで,実質効果は印刷屋の特需と一部の府民の自尊心向上だけかも.(市長相当の区長のポストも増えるので,政治家志望の人には朗報かも…)(Σ区会議員数>大阪市議会議員数 ならば,さらに政治家志望の人には朗報かも… 焼け太りだな)

話が繰り返しになるので,過去のリンク張っときますね.

大阪は副首都になれるか(かつての首都機能移転候補地との比較編)
大阪は副首都になれるか(広域ネットワーク編)
大阪は副首都になれるか(都市の位置関係編)
大阪は副首都になれるか(地盤編)
大阪は副首都になれるか(用地確保編)
大阪は副首都になれるか(平常時編)


第1話-新幹線偉大なり編,第2話-産業振興VS交流編,第3話-他の交通網編
第4話-東海道VS中山道編,第5話-新幹線駅が都市圏形成編
第6話-駅アリ>駅ナシ編,第7話-20年差が命取り編,第8話-後手必敗編
第9話-東密西粗編,第10話-リニア編


VOL.5編,VOL.6編,VOL.8編-その1,VOL.8編-その2,VOL.8編-その3
VOL.9編,VOL.10編, VOL.11編, Vol.12+Vol.13編


あれ?住民投票できるんじゃなかったの??
大阪府市統合+道州制=関西総大阪化計画??
毎年2200億円あったらできること
「2200億円」は無かったんや・・・で?
大阪府市統合+道州制=神戸市が州都?
大阪府市統合+道州制=地図に残るは「大阪駅」のみ?
ドーナツの認識方法について

全幹法改正のポイント(建設線の調査の指示編)

つづいて建設線の調査の指示編である.現行法の全文そのものはこちら

現行法では…

「第五条 国土交通大臣は、前条の規定により基本計画を決定したときは、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)その他の法人であつて国土交通大臣の指名するものに対し、建設線の建設に関し必要な調査を行うべきことを指示することができる。基本計画を変更したときも、同様とする。」

「2 国土交通大臣は、前項の指名をしようとするときは、あらかじめ、指名しようとする法人(機構を除く。)に協議し、その同意を得なければならない。」

…となっている.これも一見何も問題がないように思えるが,現状はと言うと,整備計画や基本計画が何十年も放置されたために,本来は基本計画を立てる段階で行うような基礎的な調査(需要予測等)を,この条文(整備計画を立てる段階の調査)をもとに調査しているという,何とも計画論的には恥ずかしい状況にある.

ということなので,その点を明確にするには…

「第五条 国土交通大臣は、……対し、建設線の建設に関し必要な調査を行うべきことを指示することができる。基本計画を変更したときも、同様とする。ただし,基本計画を立ててから大きく社会状況が変化している場合は,本条に基づく調査ではなく第四条に基づくものとする.

…とするかなぁ.

”基本計画を立てる段階で行うような基礎的な調査”は,全幹法施工令という政令に基づいて実施されているので,そちらについてはまた後日.

(つづく)

全幹法改正のポイント(基本計画編)

つづいて基本計画編である.現行法の全文そのものはこちら

現行法では…

「第四条 国土交通大臣は、鉄道輸送の需要の動向、国土開発の重点的な方向その他新幹線鉄道の効果的な整備を図るため必要な事項を考慮し、政令で定めるところにより、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線(以下「建設線」という。)を定める基本計画(以下「基本計画」という。)を決定しなければならない。」

「2 国土交通大臣は、前項の規定により基本計画を決定したときは、遅滞なく、これを公示しなければならない。これを変更したときも、同様とする。」

…となっている.一見何も問題がないように思えるが,この条文は計画があまり時間をおかずに整備計画に格上げされ,そして建設されることを想定している.

だが,現実には時間がかかりすぎており,当初の計画を立ててから20−30年もすると社会状況や交通ネットワークの状況が変わってしまうので,見直し規定を入れるべきだと思う.

国土計画の実現には時間がかかることを考えると,小まめすぎる変更が望ましくないことは明らかなので,例えばこういう追加はどうだろうか.

「3 基本計画を決定した後に社会状況等が大きく変化した場合には,第一条の目的に照らして,基本計画の変更が必要かどうかについて点検しなければならない.」

現実にはすでに整備計画になった段階で何十年も待たされたために,本来なら基本計画レベルで見直さなければならないにもかかわらず,第五条の規定を使って調査し直すなどという計画論的には随分みっともない状況に陥っている.

(第五条の建設線の調査の指示は,路線そのものは決まっている段階で,具体的な工事ができるかどうかに関する調査のはずだよね.PDCAちゃんと回ってないよね.)

(つづく)